« トラットリア・トマティカ訪問 | Main | 『地図と愉しむ東京歴史散歩 地形篇』 »

August 03, 2013

『「甘え」の構造 』再読

Amae

『「甘え」の構造 』[増補普及版] 、土居健郎、弘文堂

 もう40年以上前になるんでしょうか。子ども頃、渋谷の大盛堂書店に行くと、階段の踊り場に設けられていたお勧め本コーナーにずっと、『「甘え」の構造 』が飾られていた記憶があります。その後、学生時代に一度、読んだのですが、再読してみました。

 なんで再読したかというと、いまの日本社会の右傾化といいますか、ネトウヨ、在特会などが出てきた背景を大きく捉えているんじゃないかと思ったからです。『「甘え」の構造 』が刊行された当時、問題となっていたのは全学連などの学生運動で、それに対して土居先生は批判的なんですが、今の右傾化の風潮に乗った人たちも同じ『「甘え」の構造 』の土壌から出てきた別種なのかな、という気がします。状況は今の方が悪化しているとは思います。当時、普通に努力すれば正社員となり、定年までつとめあげることはそれほど困難なことではなかったと思いますが、いまはかなりの狭き門になっていますから。それでも、世界の平均から比べると、具体的に何か困っているわけでもないのに、世の中に対する不満が高まり、それが高じてくると、ある存在が気になって仕方ななくなるという「主観的虚構性」に陥るという構造は、今も昔もあまり変わらない気がします。

 もっとも、70年代前後のベトナム戦争に対する憤りというのは、まだ分かるのですが、いまの右傾化の主張には納得できるところが皆無といいますか、オウム的なものも連想させますし、こういう風潮に乗っているような人たちは背後には自分で決めることが出来ない土居先生の「甘えの構造」があるという感じがつのってきたんです。決められない人たちは少年期にガキ大将グループに溶け込めなかった不器用さもあるということが今年読んだ『パーソナリティ障害とは何か』でも書かれていたんですが、ならば、もう一回読んでみようということで、増補普及版を手に取りました。

 いろいろ再発見したんですが。甘えについて考えていくなか、「甘え」という言葉だけでなく《被害者意識という言葉が日本語独特の語彙である》ということに土居先生も驚いているんですが、自分が苦しい状況に陥ると、在日外国人が特権を持っているんじゃないかと他者に厳しく当たる被害者意識が高まるんじゃないかな、とか思い当たります。

 近現代の日本社会では容易に人を甘えさせないので、どうやったら上手く甘えられるかというルールの発見が困難になっている、とも書かれているんですが、カルト集団に閉じこもるような人たちには、子ども頃は人見知りが激しそうで、しかも運動神経も鈍そうな感じもするんですけど、これって上手く甘えられずに育ち、少年期にガキ大将グループに溶け込めなかった不器用さの原因にもなっているんでしょうか。

 「くやしい」という感情は「甘え」の延長線上にあると土居先生は書いておられるんですが、一般に甘えられた経験が乏しいと、「くやしい」感が高まり、それが被害者意識となり、最後には執念深いほどになって、そうした感情を前面に出して恥ずかしくなくなるのでしょうかね。こうした状態が、もう少しいくと、統合失調症になると書かれているんですけど…。

 彼らがある集団に居場所を見つけ、時としてヒステリックな行動に出るのは、周囲の気を引くためであり、しばしば極端な手段に出るのは、そうしないと自己の存在が確かめられないから、なんていうあたりも納得的(p.221)。

 執念深い人は、甘えを媒介として人との共感関係を経験したことが少ないので、彼らの追求は独りよがりになり、何かにしがみつく傾向が顕著になり、挫折を容認できないというあたりも(p.213-)。

 50年代まで、日本の精神科医はドイツ語でカルテを書いて、日本語のニュアンスとか全然、無視していたんだな、とかも忘れていました。ある意味、すごい時代だったな、と。

 70年代の学生運動の人たちは「良きサマリア人」的な心情を持っていたが、被害者と同一化することで、罪悪感を勝手に止揚してしまうという無理があった、というあたりも素晴らしい分析だと思います(p.266)。

 「甘え」というのは、母が巨大すぎる日本的な子育てが生んだものであるということは、徐々に明らかにされてきたと思うのですが、それと対比される西欧的な自由は信仰の中だけにあって社会的にはしばらく存在していなかったということと、日本の社会における自由というのは、長らく「死」の中にしかなかったというあたりも、忘れていまして、改めてハッとさせられました(p.143-)。

 まとまりませんが…。

|

« トラットリア・トマティカ訪問 | Main | 『地図と愉しむ東京歴史散歩 地形篇』 »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/23829/57920448

Listed below are links to weblogs that reference 『「甘え」の構造 』再読:

« トラットリア・トマティカ訪問 | Main | 『地図と愉しむ東京歴史散歩 地形篇』 »