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June 02, 2013

『謎の独立国家ソマリランド』

Somliland

『謎の独立国家ソマリランド そして海賊国歌プントランド、戦国南部ソマリア』高野秀行、本の雑誌社

 時代がようやく高野秀行さんに追いついてきたというか、時代から逃れて辺境のニッチに彷徨っていた高野さんが、ようやく表舞台で評価されつつあるように感じて素直に嬉しいです。とはいっても、あまりにも書評で取り上げられたり、NHHKのBS-Newsなんかにも出るもんだから「もう、ぼくなんかが読まなくてもいいんじゃないか」と思って、本も厚いもんですからしばらく会社に置いておいたんです。でも、ある日、読むものがなくなって、「やっぱりいくか」と読み始めたらとまりませんでした。

 高野さんというのは辺境目利きといいますか、普通の辺境好きではとても行けないようなところばかりを狙って行き、確実に仕留めるといいますか、成果を出してきます。

 今回はソマリア。ソマリアといえばクリントンも逃げだした『ブラック・ホーク・ダウン』ですかね。アイディード将軍との戦いを描いていたんですが、国連や米軍になんで刃向かえるんだろう、という疑問がずっと残っていました。また、最近では海賊ですかね。自衛隊も出動していますが、海賊4人も日本に引き渡されていて、「意外と若いヤツが首謀者らしいんだけど、もしかして仲間割れでそうなっているのかも」と傍聴した人間から聞いたこともありますが、とにかくワケわかりません。

 普通は「単なる失敗国家だろ」とひと言で片付けられるんでしょうが、やはり人間社会にはちゃんと理由があるんですね。

 ソマリアは近代以降、北部をイギリスが、南部をイタリアが支配していたんですが、イギリスは伝統の間接統治といいますか、地元の氏族社会をうまく残したのに対し、植民地経営馴れいていないイタリアは氏族社会を破壊してしまった、と。このため内戦終結後、北部のソマリランドは国連にこそ認められないけど、うまく氏族社会の制度を使って、西欧民主主義的ではないにしても、平和な「国家」をつくっているけど、氏族社会が破壊された南部ではまだ混乱や海賊行為として残っている、というのが大まかな流れ。

 また、イスラム過激派とひとくくりにされるアル・シャバーブにしても、被差別氏族が主体になっているとか、イスラム原理主義というよりも、取り残された農民が都市部に進撃するというか、都市を包囲する「毛沢東主義」の影響があるんじゃないかとも書いてあって、なるほどな、と思いました。

 あたかも、日本で5年に一度のアフリカ開発会議が開催されていますが、ソマリランドには清武温泉、弘前セレモニーホール、はくあい幼稚園などとボディに記されたバスが行きかい、南部の戦闘地域ではランドクルーザーやハイラックスに機銃などを載せた戦闘車両「テクニカル」が縦横無尽に走りまくるといった具合で、間接的にせよ、日本製品は行き渡りまくっているのには驚きます(まあ、ランクルを改造したテクニカルは全世界のゲリラや開発途上国の軍隊御用達ですが)。

 高野さんは、謎に満ちたこうした統治の秘密を、カートという覚醒作用をもたらす葉っぱを噛みながらのパーティで地元のジャーナリストや大統領の側近、氏族の長老などから聞き出していきます。

 なんつうか、大変な思いをして移動し、そこでカートを噛みながら話しを聞くという、ロード・ムービーのような味わいもあります。

 保守系の言う小さな政府の究極は、無政府状態の南ソマリアかもしれない、というのは皮肉です(p.351)。何しろ軍隊も含めてすべて氏族が運営する民間に移行したから、と。大愚は大賢に通じるというかw

 最後に高野さんは、地元のテレビ局の特派員に任命され、晴れてソマリランドとり強い繋がりを持つんですが、ミャンマーのシャン州独立運動に肩入れしたりして、ああ、高野さんは帰属を求めているのかな、と感じました。もちろん、本人は、本当の目的はもしかしたらシバの女王の王国の一部かもしれない土地にラクダで旅行したりするのが最終目的だと照れ隠しをしていますが。

 それにしても、一度、高野さんとは飲みたいな、と思いました。まあ、カートを頬張ってもいいんですがw

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