« こくわがたの冷やし普通+鶏天 | Main | >『橋本龍太郎外交回顧録』 »

June 25, 2013

『腎臓のはなし 130グラムの臓器の大きな役割』

Kanzo

『腎臓のはなし 130グラムの臓器の大きな役割』坂井建雄、中公新書

 すごい本を読んだ、という実感があるんですが、医学用語で初見のものが多くて、まだ、自分の中で消化しきれなかったので、二度読みましたが、化学の知識がないので、細かなところの理解はやはり進みませんでした。でも、ひょっとして個人的に選んでいるベストワンかな…なんて思ったりします。とにかく、こんな進化の奇跡みたいな臓器を2つも持っているんだから、自殺なんかしちゃいけませんやねぇ。

 尊敬する中井久夫先生の本で、腎臓というのはものすごく精巧な臓器であり、かつ仕事量がも厖大だというのを読んで、いつか入門書を読みたいと思っていたのですが、やっとそんな本に出会えた感じがします。奥付は今年4月だから出たばっかり。

 中井先生も書いていたと思いますが、人間は毎日、口から2.2リットル(飲料1.2リットル、食料1リットル)を取り入れ、これに代謝水0.3リットルを加えた合計2.5リットルを腎臓で処理していますが、約99%以上は尿細管で再吸収されており、濾過量は1日当たり144~216リットルにもなるそうです。こうした厖大な量を処理できるから、全身の体液の浸透圧やホメオタシスを一定に保てる、ということらしんです。

 そのシステムはまず、糸球体で血液から尿が濾過されて原尿となります。そして尿細管から尿の成分が再吸収され血中に戻されます。原尿の大部分の水分は再吸収されて血液に戻りますが、老廃物は尿細管に残って尿となります。尿はここから腎盂と尿管を通って排泄される、と。

 問題は糸球体が非常に壊れやすく、しかも再生しないこと。

 壊れやすいのをカバーするために、ものすごく優雅で柔軟な構造を持っているんですが、いったん閾値を超えて壊れたら組織が再生されないために、加速度的に腎臓機能は失われるといいます。

 そういえば、腎臓病の人って急に悪くなっていく感じが…。

 昔は、良くならないので、そのままアウトですしたが、いまは終わりにはならないまでも血液透析が待っています。一日おきに血液を総入れ替えで、体験した人に聞くと、寝ているだけでも疲れるとのこと。しかも、毎月コストが40万円!(p.189)。

 ゴッドファーザーPart2でマイケルと敵対するロスが「普通に小便ができるようになれば100万ドルだって惜しくない」と病床で語っていたのが印象に残っていますが、物語の背景がキューバ革命の時代だったことを考えると、いまなら、1億ドルぐらいの価値があると語っているのかもしれません。

 そして腎臓が悪くなると循環器がすぐにダメになります。

 《他の臓器が年老いていくまで、腎臓が働いてくれればいいのである。腎臓の機能が五年長持ちしてくれれば、それだけ健康に過ごせる時間が増える》という言葉は拳々服膺しなければ…(p.198)。煙草は吸わないので、個人的には太らないこと、塩分のとりすぎに注意することぐらいなのですが…。

 改めて腎臓の驚くべき機能、真面目さにビビリます。そのフィルター機能は凄すぎる。老廃物はキッチリ流ししつつ、タンパク質などは絶対に排出させない。そして身体全体のホメオタシスを保っている。

 とつぶやいたら、バイオをやっていた方から「細胞でフィルター作ってるってのがすごい。細胞を全部同じ方向に揃えないとフィルターにならないので。大学の時に腎細胞の培養は出来ましたが、同じ方向に揃えた培養なんて出来なかった」という返信をいただきました。

 後は箇条書き的に印象に残ったところをあげていきます。

 海棲哺乳類の腎臓がブドウの房のような異様な外観をしているんですが、これは周囲の海水より濃い尿を排泄しないと生きていけないので、腎葉の数を増やして排泄能力を高めているそうです。

 人間に毛がないのは、進化の途中で一時的に海の近くに住んでいたから、という説もありましたが、腎臓だけを見ても、そんなことはなさそうです。

 アリストテレスの『動物誌』は、「この人マジで象の舌を見ようとしたのかな…」と思いながら読んだ記憶あるんですが、魚の腎臓は腸につながっていて見るのも大変なようで、それを観察して全脊椎動物に腎臓があると書いたのは鋭いと書いてあってなるほどな、と(p.92)。

 よく理解はできませんでしたが、ここも含めて4章はすごい内容だと思いました。

 まあ、それもそのはず、糸球体ににかかっている圧力と張力のバラランスと、メサンギウム細胞の力学的な役割がわかったのは1987年のことで、さらには足突起のスリット膜も濾過フィルターの主役であるということもわかったのは1998年のことだそうで、まだまだ腎臓の全体像は研究途中なのかもしれません。

 腎臓の研究はローマ時代に活躍したガレノスはサルや犬の解剖を精力的に行って、腎臓から出た尿管が膀胱まで尿を運ぶことなどを明らかにしましたが、「きも」としか認識していなかった日本の伝統と比べると、なんともすごいな、と改めて感じました。

 正直、ぼく自身の理解力の不足もあるとは思いますが、腎臓の全体像というのは、この本でも今ひとつわかりにくい感じがします。

 まあ、話し半分ぐらいしかわかりませんが、焼鳥でも腎臓は小豆という希少部位。ヤキトンのマメも含めて喰いにいきますかねw

 後半の腎臓研究の歴史と治療法も含めて抱負なイラストが素晴らしい。

|

« こくわがたの冷やし普通+鶏天 | Main | >『橋本龍太郎外交回顧録』 »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/23829/57663033

Listed below are links to weblogs that reference 『腎臓のはなし 130グラムの臓器の大きな役割』:

« こくわがたの冷やし普通+鶏天 | Main | >『橋本龍太郎外交回顧録』 »