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May 28, 2013

『外交証言録 湾岸戦争・普天間問題・イラク戦争』

Orita

『外交証言録 湾岸戦争・普天間問題・イラク戦争』折田正樹

 岩波から出ているオーラル・ヒストリーによる『外交証言録』シリーズの第三弾。『沖縄返還・日中国交正常化・日米「密約」』『日米安保・沖縄返還・天安門事件』に続き、イラク戦争というリアルタイムの現代を扱ったもので、北米局長や英国大使などを歴任した折田正樹氏へのインタビューをまとめたもの。

 折田氏は「はしがき」で《日本は一見すると、世界の中でも、豊かで安定した国であるため、一国で生きていけるような錯覚を持っている人も多い》としていますが、確かに陸続きの国境がなく、四方を海で囲われてきたので《国際的な役割を果たすとの観点》を持つような人は少ないのかな、と思います。終章でも自身の外交官生活を振り返って《国際的な役割を果たすのが自分の責任だということを自ら考えるという意識がもっとあっていいのではないかと思います》と付け加えています。まあ、実感なんでしょうね。

 折田氏は海部内閣で総理大臣秘書官として湾岸戦争時に官邸外交を支えていたのですが、《何か起きたときに日本と連絡を取らなければいけないと世界の首脳がかなり思っていたようです。日本の国際的な地位が相当上がってきていたと実感しました》と語っているんですが、中曽根内閣、竹下内閣と続き、第二次オイルショックからいち早く立ち直った日本は、ODAの額も世界一になるなど、その存在を高めていったんだな、ということが改めてわかります。

 しかし、同時に、湾岸戦争では交戦時に協力できることがほとんどなく、そうした反省から有事法制やPKO法案などの成立につながっていく、という流れだったんだな、ということも改めて認識しました。
 
 昔の話しでは、ベトナム戦争当時、イギリスは今ほどアメリカべったりではなく、医療部隊ぐらいしか派遣してなかったというのには、なるほどな、と(p.19)。

 沖縄密約事件の時には条約課に在籍していて、《西山太吉氏は、電報のコピーそのものを横路氏に渡すことにより情報源が明らかになってしまうという、ジャーナリストとしてはおかしいことをやったなと思っています》というのが印象的(p.27)。

 ロシア人の恐怖ということについて、第二次大戦での被害の大きさなどをあげ、ロシア人は少しでも遠くに国境線を置かないとやられてしまうという意識が強いということを語っていて、なるほどな、と(p.50)。

 外務省の役人なんかが、海外でホームパーティを開いて相手国の要人との関係をつくることを外務省用語では「自宅設宴」というのは初めて知りました(p.84)。

 1989年には東欧で次々と革命が起きたのですが、《不思議なことに、だいたい週末に起きました》というのは、そうだったかな、と(p.97)。総理大臣にブリーフィングしなければならない立場だったので、よく覚えているんでしょうね。また、1989年はODAで日本がトップになった年でもあるんだな、と(p.114)。

 第一イラク戦争で、開戦直前にゴルバチョフが「フセインはクエートから撤退するかもしれない」という電話を海部総理にかけてきたそうですが、これがソ連の首脳が日本の首脳にかけてきた最初の電話だったそうです(p.142)。

 条約局長の時の国会答弁では、サンフランシスコ平和条約の11条について、あの条項があるために、日本は極東軍事裁判は不法だと異議を唱える立場ではなくなったものの、侵略戦争だったと国際法上認めたとまではいかない、と答えたそうです(p.178)。

 また、橋本・クリントン会談では、米軍兵による少女暴行事件などによって沖縄問題が大きくなっている中で、当初は普天間移設を言うか言うまいか迷っていた橋本総理も、クリントンから率直にお話しいただけますか、と促されて普天間という固有名詞が出た、と語っています。細かいところですが、なんでもアメリカ次第なんだな、と改めて感じさせられました(p.196-)。

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