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April 21, 2013

『愛しの昭和の計算道具』

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『愛しの昭和の計算道具』ドクターアキヤマこと秋山泰伸、東海大学出版会

 先週の日経の書評欄「あとがきのあと」で紹介されていたので読んでみたら懐かしくて大正解。

 個人的な挫折感のひとつは、計算尺を扱えなかったことなんですが、そんなことや、これもプログラムを書くことが面倒なので、結局、使いこなせなかった関数電卓のことなんかを思い出しました。そういえば、算盤を小学生の時にはやらされたクチなんですが、まったくできなかったなぁ…。

 そうすると電卓というのは、本当に有り難い「計算道具」なんだな、と改めて思いますね。NHKの番組で、アメリカのGEかどっかが、最初に熱転写プリンタで電卓を出そうとしたんだけど、市場がないと判断して、やめたなんてことも思い出しました。あと、「答え一発カシオミニ」の弱点は電池の持ちで、液晶とともに、サーキットも電気のオン/オフでも0/1の計算をすることで、大幅に節電するアイデアなんかもアメリカから輸入したなんていう話しも思い出しました。

 著者によると、バブル崩壊後に生まれた学生さんは「日本は技術力があって、高度成長を遂げた経済大国で…」という実感がないそうで、講義の一貫として《世界相手に日本の技術力を示し、強力な国際競争力を発揮した》昭和の計算道具を振り返ろうと本書を執筆したそうです(p.22)。

 しかし、最初に登場する手回し式の計算機というのは凄いですね。代表的メーカーのタイガー計算機は昭和の初めからつくられはじめ、戦後の第3世代には歯車の工作精度がマイクロメートルに達しているんじゃないかというぐらいだそうです(p.38)。

 この手回し式の計算機というのは昭和40年代半ばまで使われ続けたそうですが、尊敬する丹羽宇一郎前中国大使の経営者ブログでも《食糧部門に配属されたものの、仕事は地味なものばかり。文書のコピーをとったり、手回し式の計算機でひたすら計算したり…》という部分がありまして、伊藤忠なんかでも若手社員がガンガン回す作業をやらされていたんだな、と思いました。

 手回し式計算機は加減乗除はできますが、基本は足し算。コンピュータというのも究極のところ足し算の道具なんだな、ということが原理的に理解できますし、逆に足し算を基本になんでもできてしまうことの恐ろしさにも想いを致します。

 計算尺に関しては思い出があります。基本的に授業というのはあまり聞かずに、ずっと本を読んでいたんですが、中学生の数学の先生で、いつも白衣を着て、計算尺でささっと計算してしまういう女の先生がいたんです。スケールを読む時に目を細めたりする仕草なんかも覚えていて、羨ましかった。個人的は対数が(も)良くわからなかったので、使いこなせなかったんですが…。

 計算尺はほぼヘンミ(HEMMI)の独占だったらしいんですが、孟宗竹製の計算尺は湿度や温度による狂いが少なく、輸出もされていたそうです。つか、北アメリカなどには竹は自生していないとか(p.88)。ヘンミは海外特許もとるなど先見の明があったそうです。昭和50年にヘンミは計算尺の生産を中止しているそうで、そこからが電卓の時代なんですね。

 化学の先生だけあって、計算道具の話しだけでなくニッケル水素電池やリチウム電池を入替えたりすると特製が違うので、充電できない程度ならいいけど、高エネルギーを蓄えるので爆発したり発火したりする可能性がある、なんていうあたりも勉強になりました(p.148)。ケータイやカメラがしょっちゅうリコールされたり、B787なんかもトラブル起こしたりするのは、こうした問題があるからなんですね…。
 
 昔の博士は「博学」だったけど、今の博士はごく狭い分野に関して深く知っているマニアっぽい人という定義も気に入りました(p.24)。

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