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April 06, 2013

『デジタルネイティブの時代』

Igital_native

『デジタルネイティブの時代 なぜメールをせずに「つぶやく」のか』木村忠正、平凡社新書

 生まれた時から整備された通信環境の中で育ってきた世代をデジタルネイティブ (digital native) と言うらしいですが、この本では1980年前後生まれ以降を4つの世代に分類して分析しています。2010年現在で少子化の進む日本でも、人口のおよそ3割がこの世代ですが(p.19)、世界全体では半数を超えているとのこと(p.41)。

 ジャーナリスティックな本かと思いきや、文化人類学的手法を使った分析が主体で、調査自体は、再利用も含めてまあよくやったわなとは思いますが、学術書からかみ砕く作業がなっていないというか、内容が展開されていないというか「空気を読む力」なんていうことを言いたいのなら、必ずしも調査は不要なんじゃないかな…と思いながら読んでいました。

 以下、箇条書きで。

 アラブの春の情報発信は、街頭の人びとからのツイッターではなく、ハブになっていたのは海外に逃れたディアスポラな人びとによって担われたというのも、現場で力となったのはSMSだというのも、ああそうですか、という感じ(p.31-34)。

 社会学者たちは《特定のハッシュタグのついたツィートがある日どれだけあったか》を調べているんですか(p.38)。インテルでは20人以上が働いているそうです(p.59)。ちなみに本書は質的研究と量的研究のハイブリッドメソッドとのこと(p.73)。

 そこで浮かび上がったのは①空気を読む圧力②対人関係を構成する「親密さ」と「テンションの共有」が相互に独立し、「テンションの共有」のみによる(「親密さ」を伴わない)「親しさ」への志向③「コミュニティ」「ソーシャル」とは異なる「コネクション」という社会原理の拡大④サイバースペースへの強い不信感、低い社会的信頼感と強い「不確実性回避傾向」―だそうです(p.85)。

 デジタルネイティブ世代の視覚、ビジュアルを重視した学習法は、狩猟採集時代が長かった人類の進化の歴史を考えると普遍的な能力であり、むしろ前世代が文字言語や論理に偏重していたのかも、と(p.47)。

 本書の言いたいこととはあまり関係はないですが、ミハイ・チクセントミハイ(Mihaly Csikszentmihalyi)の提起した、心理的エネルギーが100%取り組んでいる対象へと注がれている状態を表すフロー体験という概念はなるほどな、と。ありがたいことに、これまで個人的に何回もフロー体験がありました。語学も含めて身についたものというのは、このフロー体験があったものです。資格とか興味ないし、個人的に無意味だと思うのは、そこにフロー体験がないからかな。

 同じく「人間関係のボット化」みたいな言い方は、面白いかな、と(p.133)。

 同じくボワセベンによるエゴ中心対人距離ゾーンというゾーニングモデルは覚えておこうかな(p.146)。

 著者が第4世代と呼ぶ、もっとも新しい層では、メールが来たら5分で返すという「5分ルール」なんてのが暗黙の了解のうちにあるそうです(p.128)。

 デジタルネイティブの世代では、FaceBookに「看板を立てておく」というのが近況を知らせるのに便利だと認識しているらしい(p.135)。《ソーシャルメディアは、友人たちに広く薄く自分の近況を知らせ、反応を待つことができる》というあたりは、なるほどな、と(p.136)。

ツイッターやLINEなどは、一対一のメールと比べて、《絡みたければ絡めばいい》という軽さがある、と(p.155)。

 日本のSNSでは自己開示が極めて低いのが特徴だというのは分かるな…(p.165)。

 対人距離感では親密さだけでなく、テンションも重要だ、と。ちなみに、日本語で使われるテンションは誤用とのこと(p.183)。こうした関係性が「コネクション」を生んでいるのかな、と(p.203)。

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