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March 09, 2013

『パーソナリティ障害とは何か』

Personality_disorder

『パーソナリティ障害とは何か』牛島定信、講談社現代新書

 以前は人格障害と言っていましたが、痴呆→認知症、精神分裂病→統合失調症などの書き換えにともない、パーソナリティ障害となっています。

 DSM-IIIによる3群、10タイプのパーソナリティ障害が初めに紹介され、DSM-IIIの難点について指摘したあとに、それぞれの障害について、治療例なども紹介しながら解説する、というスタイル。

 また、A群についても中見出しとして《主観的世界のなかの「私」》《主観と客観のあいだ》《外界と「私」との対峙》がそれぞれつけられていて、なかなか分かりやすいかな、と。


A群:対人関係からひきこもりと奇妙な態度を特徴とする群
妄想性パーソナリティ障害(Paranoid personality disorder)他人の動機を悪意あるものと解釈しやすく、不信と疑い深さが強い
スキゾイド・パーソナリティ障害(Schizoid personality disorder)社会的関係からの遊離、感情の乏しさ
スキゾタイパル・パーソナリティ障害(Schizotypal personality disorder)親密な関係を忌避し、特異な世界を形成

B群:劇的、情緒的、そして奔放さを特徴とする群
反社会性パーソナリティ障害(Antisocial personality disorder)他の権利の侵害に代表される秩序破壊的傾向
境界性パーソナリティ障害(Borderline personality disorder)情緒、自己愛、対人関係等の不安定さ、自傷傾向
演技性パーソナリティ障害(Histrionic personality disorder)過度に情緒的で、他の注目を惹こうとする意図
自己愛性パーソナリティ障害(Narcissistic personality disorder)誇大性、賞賛を求める欲求、共感性の欠如

C群:内的不安や恐怖を特徴とする一群
回避性パーソナリティ障害(Avoidant personality disorder)自尊心の傷つきを怖れて社会的に引きこもる
依存性パーソナリティ障害(Dependent personality disorder)特定の対象に依存し、自立的行動がとれない
強迫性パーソナリティ障害(Obsessive-compulsive personality disorder)完全主義的で、柔軟性に欠け、抑圧的である


 風変わりで妄想を持ちやすく閉じこもりがちな性質を持つA群は《主観的世界のなかの「私」》ですし、感情の起伏が激しく演技的でストレスを感じると他人を巻き込むB群は《主観と客観のあいだ》、不安や恐怖心が強くて周りの評価がストレスになるC群は《外界と「私」との対峙》なんでしょうね。

 なるほどな、という整理であるとともに、「まあ、それぞれ自分にあてはまるわな」とも思います。吉本隆明さんがどっかで書いていましたが、こうした病を感じることは常にあるけど、それを感じている時間が短いだけだ、みたいな言い方は実にわかるな、と思っています。

 弱気な時は、疑り深くなっていますし、閉じこもって感情の起伏がないような休みの日の過ごし方をしている時もある。自己愛は強い方ですし、賞賛を求めたい気持ちも人後に落ちません。

 逆にスキゾイド・パーソナリティのように、現実と非現実が交わる世界で才能を発揮するような芸術家、哲学者や宗教家にはとても及ばないありふれた平凡さだけは持っているのかな、と我ながら情けなくなってしまうほど。

 個々の議論はぜひ本書を読んでいただきたいのですが、例によって面白かったところを紹介します。

 サイクロイドパーソナリティ障害はクレッチマーが躁鬱病の病前性格として記載しているんですが、アメリカでは全体的にサイクロイド的性向を持っているので、DMS-IIIから外れたとか。抑鬱的要素と躁的要素が循環するような気質というのは、確かにアメリカ人っぽいかもしれません(p.50-)。そして外的には肥満型体格で人当たりが柔らかく、善良というのがサイクロイド的だそうです(p.57)。なんか、陽気なアメリカ人っていう感じ。

 サイクロイド・パーソナリティ障害では、成熟度が高い人格者の場合は、怒りが暴力沙汰にならぬぬように自分で抑え込むことで、パニック発作や強迫症状を呈することもあるそうですが、なんかアメリカ映画によく出てきそうなヒステリー症状の中年女性のような感じもします(p.69)。

 反社会性パーソナリティ障害は自律神経の反応の低さが目立ち、それが無分別な行動を思いとどまらせる予期不安を起こし難くしていることを示唆しているそうです。また、反社会性パーソナリティ障害は男性の割合が女性の4〜8倍も多く、逆にそれは女性のヒステリーの多発に対応しているという指摘もなるほどな、と(p.98-)。

 森田神経質(回避性パーソナリティ)に、具体的に何か困っているわけでもないのにある存在が気になって仕方ないという症状が報告されているそうです。こうした思い込みは「主観的虚構性」と言うんですが、なんかそのままヘイトスピーチをまきちらすような人びとに当てはまりそうです(p.142)。自分が困っているわけでもないのに、外国人や生活保護を受けている人が悪い、何か特権を得ているんじゃないかという「主観的虚構性」に苛まれて、主観的な正義を振りかざしてしまうみたいな人たち。

 こうした人たちを見ていると、この人たちの喜びと悲しみはなんなんだろうな、と思うことがあります。個人的な楽しみ、自恃があるのかな、みたいな。

 牛島先生によると、かつて森田神経質に当てはまるような日本人たちは、高い自我理想を背景に、青年期の困難を乗り越えていったが、60年代以降は、登校拒否や引きこもりなど「神経質の不純型」が目立つようになり、かくてDSM-IIIの回避性パーソナリティ障害に組み込まれて行ったというのは、どれだけ今の右翼的言辞を吐く人たちのカリカチュアなのか…と少し笑ってしまいました。

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