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March 05, 2013

『ひとりフラぶら散歩酒』

Furabura_ohtake

『ひとりフラぶら散歩酒』大竹聡、光文社新書

 「さけつま」の初代編集長、大竹聡さんの連載がまとめられました。

 考えてみれば、明治以降、小説を書いたり、勉強しなければならないのに飲んでしまう自分のダメさ加減の心情風景をいかにスケッチするのか、というのが酒と文章の主要テーマだったように思うわけですが、丸谷才一さん以降、酒を飲むシチュエーションを語ること自体が、なにごとかを語ることことになり、そして遂に大竹さんによって、ヒマをもてあました普通の人びとが、アル中にならずに、うまく酒と付き合っていく、みたいな姿を淡々と描かれるようになりました。

 もはや酒に逃げることを含めてモチベーションを高めることを描くことはなくなり、酒を飲むことをいかに飽きずに続けるか、酒を旨く飲むモチベーションをいかにローテンションで保っていくのか、ということが、時間と余生と強靱な内臓を手に入れつつある現代に生きる日本人の大きなテーマになりつつあるなのかな、と。

 アル中関係の本は金剛書店のものもふくめて両手を広げたぐらい読ませてもらいましたが、やっぱり、怖いのは連続飲酒かなと思います。何が怖いって、フト、意味もなくその状態に移行してしまうこと。決して、美味しいから飲んでいるんじゃなく、たぶん美味しい酒をもう飲めないんじゃないかという不安から飲んでしまうんじゃないか、なんて。

 そうしたことを防ぐひとつの戦術として散歩酒みたいなのは有効かな、と。

 散歩をすれば喉が渇く。喉が渇けば酒はうまい。つまみもうまい。

 たまには山歩きもする。すると高尾山あたりでも軽装備だと怖い目に合う。そうなると、まだ明日も美味しい酒が飲みたいということで、無理することなく引き返せる。

 Point of No Returnから余裕で引き返すことができるためにも、毎日の酒業には変化が必要だし、そうしたことが長く酒と付き合うためにも必要なのか、と思いながら読んでいました。

 ひとりで都内を散歩すれば、松陰神社のすぐ近くに井伊直弼の墓のある豪徳寺が位置する不思議に想いをいたすことができますし(p.47)、ツールとかジロなんかの自転車中継で、バーッと集団から飛び出しても、すぐ吸収されることを「たれる」なんていいますすが、あれって競輪の先行した選手が持たないことを言う用語だったとは知りませんでした(p.84)。

 箱根に『箱根霊験躄仇討』の主人公、貞女初花にあやかった店名の蕎麦屋があるとは知りませんで、ぜひ、いつか行ってみたいと思いました(p.109)。この作品、歌舞伎や文楽でもなかなか演じられないんですよね…。

 あと、行きたくなった店は田原町の出口を出たところにある「焼きそば花家」。ここで瓶ビールと焼きそばをいただきたいと思いました(p.191)。

 「心細い、カルピス飲みたい」というフレーズには笑いました(p.203)。

 GWあたりに都内の酒蔵なんか巡ってみようかな…。

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