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February 03, 2013

『談志絶倒昭和落語家伝』

Dansi_rakugokaden

『談志絶倒昭和落語家伝』立川談志、大和書房

 実は(とは言っても大したことはないんですが)、まだまだ、談志師匠の本やDVDは見続けています。今朝の日経書評欄で立川談四楼著『談志が死んだ』が取り上げられていて、評者の矢内先生は「つまりは談志があまたの声で語られるべき稀有な人だということ」と書いているんですが、その通りだと思います。

 ということで、この本。

 単なる個人の想いから八世桂文治から文楽、志ん生、柳橋、円生、可楽、今輔、柳枝師匠らの高座や自宅まで追いかけた二千枚の貴重なフィルムは、撮影した田島謹之助さんから談志師匠に受け継がれ、その引き渡しの際には、談志師匠が田島さんだけのために「居残り佐平次」を演じるというパフォーマンスが行われ、その模様もDVDで発売されています。

 DVDでも談志師匠がこうした大師匠方について語っているので、どっちがスピンアウトだかわかりませんが、色物の芸人さんたちにも触れられているDVDに比べて、本は噺家だけに集中しています。

 本としてまとめる際には、やはり落語というくくりでやらなければならなかったのかもしれません。

 この写真の凄いところは、ほとんど売れてない時代の、それでもしっかりと高座をつとめていた大師匠方の姿をとらえているところ。落語は、ラジオの民放誕生で専属での囲いが始まってバブルを迎えるんですが、そのバブルの前。

 だから、今みたいに色紋付きで写っているような高座の写真はありません。みんな黒紋付き。これは、昔がそういう仕切りだったのか、それとも衣装持ちが少なかったからなのか、よくわかりませんが、かえって、モノクロに顔の表情だけが際立って、それぞれの噺家の個性が浮かび上がってくる感じがします。

 DVDでも談志師匠が絶賛していたんですが、柳好の野ざらしで「コツぁ釣れるかい、骨ぁ」と向島に着いたあたりの場面は最高。

 釣り竿に見立てた扇子を振っているところなんざ、糸が見えるようです。

 ぼくのよく通っている居酒屋のご主人は、黒門町が「勉強し直してまいります」と高座を降りた時を見ているという方なんですが、そのご主人が一番好きだと言ってたのが可楽師匠。

 そして、八代目三笑亭可楽師匠のところが、談志師匠の、大師匠方に対する見方になっていると思います(p.99-)。

 その頃の五人衆、文楽、志ん生、円生、三木助、小さん。これらを俗な言葉で「本格」というと、可楽は「本格ではない」ということになっていて、それは正蔵師匠にもいえたし、柳枝師匠もその部類に入れられていた。  TBSが専属制度を始めたときに、その道の通人であり、指導者であり、プロデューサーであった故出口一雄氏は、その五人(三木助はNHKにレギュラー出演していたので除かれた)に、昔々亭桃太郎、春風亭柳好、あとへきて、桂右女助、三遊亭円遊を加えた。つまり、「娯楽品」とでもいうべき人たちも集めた。ついでに、若き才人桂小金治も、後に正蔵も入ったか……。つまりネタの多さ、変わった噺をする、という理由だったろう。  その後、遅ればせながら、文化放送が、またはニッポン放送が専属制度を始めた。文化放送は、今輔、可楽を専属にした。これらは、悪くいやァ売れ残り。TBSの一流に対して、二流と判断されていた人たちであった。

 というんで、こうした差別化が円生、小さんの人間国宝にもつながっていくんでしょうが、それに否定的だった談志師匠の言葉を借りると「三平を国が守ってもしょうがねぇ」とぼくも思うんですよね。だから、しゃっちょこばって、藝術院会員なんかならない方がいいと思うし、いまの名人でいえば歌丸師匠のように、そんなもんになるより、笑点で多くの人たちを笑わせ、落語は地道にやっていけばいいや、という方向の方がいいな、と思っています。

 個人的に好きなエピソードは柳枝師匠のところ。

 談志師匠が子どもの頃、地元のお祭りで演りにきていた柳枝師匠に「花色木綿を演ってください」と頼んだら、柳枝師匠は客に文句は言わない「お結構の勝っちゃん」なので「へいへいへい」てなことを言いながら演っくれたそうです。

 柳枝師匠、可楽師匠なんか、もっと、もっと見直されてもいいと思うんですよね。

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