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February 16, 2013

ヨコハマ・フットボール映画祭2013

Football_undercover

 ヨコハマ・フットボール映画祭(YFFF)では初日に『フットボールアンダーカバー 女子サッカー・イスラム遠征記』(2008)と『勝利への脱出』(1981)、『ソカ・アフリカ 欧州移籍の夢と現実』(2010)を観ました。

 サッカーという媒介が入ると、まったく知らない社会に住む人たちの日常が等身大に見えてくるというのは去年のベトナム映画『ぼくらのサッカーチーム』を観ても思ったし、今年も改めて感じさせてくれました。

 『フットボールアンダーカバー』は女子サッカーのナショナルチームはあるものの、経済制裁その他で試合経験がないということを聞いたドイツのアマチュアチームの選手が、イランの石油会社のサポートを受けながら遠征を実現。男子観戦禁止の状態で試合を行ったところまでを描いた作品。去年、YFFFで観た『オフサイドガールズ』(自宅軟禁中のジャファール・パナヒ監督の作品、2006)は女子観戦禁止の代表戦をどうしても観たいという映画だったので、その逆。

 ビザの発給や試合会場、観戦形式までイラン革命防衛隊がちゃちを入れる中で、始まってしまえば試合に熱狂し、「女性の権利を」と訴えるイラン人女性たちが活き活きと描かれていて、「この人たちに後で弾圧はなかったんだろうか」と心配になってしまうほど。シュプレヒコールを繰り返す女性たちの服装からして、比較的裕福な方たちが主導してやっているのかな、なんてことも考えました。

 にしても、イランが問題は多かったにせよパーレビ国王時代に女子サッカーチームをつくった時には世界でも最先端をいっていたのに、原理主義者がはびこると社会は停滞するという見本のようになってしまいました。しかし、そうした社会でも、サッカー好きの少女たちはベッカムに憧れ、PS3でサッカーゲームを楽しみ、スカーフを巻きながらもシュート練習をし、代表から外されてもなお練習を続けるんです。彼女たちと、観戦中にシュプレヒコールしていた観客に幸せがあらんことを祈ります。

 『勝利への脱出』は再見ですが、ジョン・ヒューストンが鼻歌交じりで余裕綽々でつくったような傑作。自伝『王になろうとした男』で、ヒューストンは自分のことをスタイルのない監督だと語っていますが、なんでもござれでスタローンみたいな大根役者を使っても見事な作品につくりあげている力量は素晴らしいのひと言。捕虜収容所の全景を高いところから見せる導入部のマスターショットは見事なものですし、湿り気ゼロの最後のあっけらかんとした終わり方なんか凄すぎます。

 イラン人女性たちのシュプレヒコールもそうだし、『ベルンの奇跡』のTor! Tor! Tor! Tor!というアナウンサーの声もそうですが、サッカーの試合は叫び声があってこそ盛り上がるもの。サッカーへの造詣がさほど深いとは思えないヒューストンですが、『勝利への脱出』の「ヴィクトワ」の大合唱に包まれての脱出劇は、それだけでサッカーの本質をガッチリと捉えていたと思います。そして、『勝利への脱出』は本当は試合に物理的に参加したいサポーターの禁断の夢を描いた映画なのかもしれません。

 『ソカ・アフリカ 欧州移籍の夢と現実』ではカメルーンのサッカーどころヤウンデの町並みを初めてじっくり見せてもらったな、と思いました。「緑が一杯だ」と語っていましたが、どちらかというと土埃が印象的だったでしょうか。

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