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January 12, 2013

『敗者のゲーム』

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『敗者のゲーム 金融危機を超えて 第五版』チャールズ・エリス、鹿毛雄二(訳) 、日本経済新聞出版社

 株式市場が活況を呈しています。ちょうど、3.11の直前みたいな感じでしょうか。もしも、あの災害がなかりせば、あるいは、せめて福島第一原発の事故があそこまで悪化しなければ、今頃は日経平均も1万5000円ぐらいをうかがう勢いだったんじゃないかと思いますが、まあ、そんなことを考えても意味はありません。

 あの震災は、日本という国が欧米と比べて圧倒的に自然災害リスクが高い国だという現実を、改めて教えてくれましたし、高度成長から安定成長までの時期は、たまたま地震活動がさほど活発ではなかったのではないかという後知恵も教えてくれました。これからインフラの耐震化、長寿命化などで、新しい工法なども考え出されていくと思いますし、原発の安全を高めるような技術も含めて、海外に輸出できるようになるという方向になればいいと思いますし、また、そうなっていくんじゃないかと期待しています。

 ということで、ハワード・マークスの『投資で一番大切な20の教え』で激賞されていたのでこの本も読むことにしました。

 例によって三点でまとめると

1)個人投資家は株式市場において、ミスをした回数が少ない方が勝てるというアマチュアのテニスプレーヤーのようなゲームプランに徹するべきで、もっとも薦められるのはインデックスファンドへの投資
2)投資で「アルキメデスの梃」となるのは時間。長時間保有し続ければ、必ず株価は上がるし、短期間で売買を繰り返せば、手数料を取られるだけに終わる
3) 投資家が市場リスクとともに意識しなければならないのは、インフレリスク。また、《リスクとは、必要な時に必要な資金を持っていない状態》(p.91)

 といったところでしょうか。

 個人的にも思い出すのですが、若い時にあるオーナー企業の会長から「ぼくは株で損したことがない。なぜなら、下がっているときは売らないから」という話を聞かされたことがあります。当時、分からなかったこの話の意味を、いま『敗者のゲーム』を読んで深く理解できるようになりました。まずは、株価が低迷しても、おそらく現物で持っていたから、暴落時の追い証で売らざるを得なくなるというハメに陥らずにすんだんだろう、ということ(ぼくも何回も書きますが信用取引は絶対にやりません。10分後は遠い未来だと思っています。信用取引などをやって、必要な時に必要な資金を持っていない状態に陥ることが真のリスクなら、そんなリスクを最初から背負うことは間違いだと確信しています)。そして、これはこのオーナーの話には反論することにはなりますが、売らないとはいっても、株価がずっと低迷しているような企業には破綻リスクもあるだから、幅広い銘柄をカバーするインデックスファンドなどでヘッジする必要があるだろう、ということ(もちろんこのオーナーも分散投資はしていたでしょうが)。

 チャールズ・エリスの素晴らしいことは、単なる投資術あるいは個人投資家へのアドバイスだけでなく、ものごとの本質から目をそらしてないこと。それは《個人投資家は、機関投資家とは違う。単に、個人投資家の資金量が小さいというだけではない。決定的な違いは、人間はいつかは必ず死ぬという厳然たる事実である》というようなところ(p.136)。

 現物だけで勝負し、分散投資し、暴落時に投げ売りするようなことを避け、じっと保有し続けられても、個人投資家は必ず死にます。それが、生涯を通じた投資プランを考えなければならないけれど、あの世に財産は持っていけないのだから、少しでも社会貢献に役立つことに使えば、深い精神的充足感をもたらすだろう、みたいな言い方にもつながっていきます(p.195)。中国西部やアフリカに生まれたら、そもそも財産を形成できたのか、ということに想いをいたせば、これまで生きてきた社会に還元することは大切なことだな、と。

 《人間は感情的な動物である。より働けば、それだけ多くの成果が得られてしかるべきだとも思っている。まったく非合理的な生き物なのである》なんていう言い方も好感が持てますね(p.48)。だいたい、人間は自己評価が高すぎます。だから失敗するんでしょうが。

 いままでもやっていないことですが、これからも絶対やらないようにしようと改めて思ったのはコモディティ商品取引。《コモディティ取引は、価格変動の投機にすぎない。経済的付加価値を生まない以上、投資とはいえない》(p.147)。
 
 また、《人が一生涯で使う医療費の八割は、人生の最後の六カ月に支出される》(p.163)という言葉も印象に残りました。個人的には、自由に動ける時間をなるべく長くするために努力をし続けていますが、この最期の時間をなるべく平穏に過ごす、という視点もそろそろ頭の片隅に置かなければならないのかな、と思いました。

 さて、この5版はリーマンショックを踏まえて書かれています。そして、見事なまでに破綻したアイスランドやマドフのケースと市場が違うのは、前者は損失が巨大で回収が不可能なのに対し、市場は回復するということだ、と(p.179)。だから、個人投資家にとって最も避けなければならないのは、大暴落時に投げ売りして、損失を確定してしまうことなんだ、と。

 人生終盤で成功するために、チャールズ・エリスは個人退職貯蓄制度(IRA)への加入を真っ先に勧めています。日本における似たような制度である生命保険料控除となる個人年金には入っていますが、非課税枠は低いものの、財形年金(サラリーマン対象の老後資金準備制度)には、その年齢に達したら入ろうと思いました。

 現在、最高のベンチャー・キャピタル・ファンドやヘッジファンドは新規投資家には門を閉ざしていますが、それは、もう投資枠を拡大するような対象がないからであり、それはグルーチョ・マルクスの名台詞である「自分をメンバーに入れてくれるようなクラブには入りたくない」というアンバビレンツな状況に似ているというあたりも気に入りました(p.203)。

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