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January 19, 2013

『脳には妙なクセがある』

Ikegaya_kuse

『脳には妙なクセがある』池谷祐二、扶桑社

 池谷祐二先生の脳科学に関するアウトリーチ本は必ず読むようにしているんですが、これは昨年夏に出ていたのを買い忘れたもの。相変わらず情報満載で、読んでいてタメになることばかり。

 例によって、箇条書きみたいな形で…。

 不安と嫉妬や劣等感は、共通した動物的情動のようで、前帯状皮質や扁桃体が同じように活動するそうです(p.32)。なんとなくわかるような気がします。不安だから嫉妬の感情を抱くし、劣等感も湧く、と。この逆で、他人の不幸を見聞きすると、快感を生み出す報酬系の側座核が活動するそうですから、子どもっぽすぎてヤになってしまいますが、開き直って考えれば、実に赤裸々でいいなとも思います。人はこういった感情を上位自我で強引に押し込んでいるんでしょうね。プライドを感じる時に社会性を感知する脳回路が活動するというあたりも、一人では生きていけず、絶えず周りからの承認が欲しい人間の姿と合致するように思います(p.41)。

 側座核は罰を受ける人を見聞きしても活性化するそうで、特に男性はそういう傾向が強いらしい。一方、女性は罰を受けてつらい思いをしている人に感情移入する方向で島皮質や帯状皮質が強く反応するとのこと(p.47)。しかし、裁判員裁判の例なんかを見ると、女性が乱暴されたケースなどでは、女性の方が極端に厳しい量刑を課する傾向があるということも聞いていますし、どうなんでしょ。

 オキシトシンという物質を吸引させると、相手を盲信してしまうそうですが、まだ、この薬物の取扱には対応がなされていないそうで、金融界などで悪用されないか心配です(p.62)。また、サル真似のように、さりげなく相手と同じ仕草をすると気に入られるとかも笑えます(p.134)。

 動揺していると冷静な判断ができない、というのも当たり前ですが納得的(p.73)。全般的に大切なのは左視野というのも、同様(シュードネグレクト、p.94)。これは脳梁の発達していない鳥もそうらしいので、250万年前にも遡ることができる、と。

 五感のうち臭覚だけは視床という中継点を通らず、大脳皮質や扁桃体に送られるそうで、だからアロマセラピーは効くんだ、と(p.153-)。

 日本人が寒がりなのは欧米人と比べて0.3~0.5度体温が低いためで、しかしもそのおかげで低カロリーの食事ですみ、寿命も長いというあたりも納得的ですが、こうしたカロリスは記憶力も強化するそうです(p.164-)。また、日常シーンを自動的に1日約2000枚撮影するセンスキャムは記憶障害患者に効果があるそうですが、ぼくたちがケータイやスマホでせっせと写真を撮るのも、「鮮明な記憶を思い出せる」効果に薄々気がついているからなのかもしれません(p.167)。

 音痴な人は空間処理能力が低い(p.180-)、若者はマイナスイメージの写真などネガティブバイアスに強く反応する(p.187)、ただなんとなくという好き嫌いという生理的な好悪癖が嗜好をつくる(p.198)、人の成長は反射力を鍛えるということであり、そのためには良い経験をするしかない(p.261)、あたりも素晴らしい。

 酔っているという感覚は血中アルコール度よりも、線条体の活動を活発させるが、これはすべてのドラッグと同じというあたりは身につまされます(p.193-)。また、酔っていると不安情動に関係する脳部位が活性化しないために、恐怖を恐怖として認識できなくなっているというのも覚えておこう、と。

 メタファーを利用すれば、受け手の脳を強く活性化できる、というのは「うまいこと言うね!」という反応からもすごく納得的(p.232-)。つか、これがコミュニケーションのコントロール術なのかもしれないとのこと。考えてみればヒネリのないオヤジギャグ、ダジャレがつまらなく感じるのも、こうしたことの反対なのかもしれません。

 出アフリカしたホモサピエンスが、ヨーロッパでネアンデルタール人に会い、身体の大きなネアンデルタール人の男が、小さなホモサピエンスの女と交配して、白人と黄色人種が生まれたというのが最近分かったらしく感動しました(p.224-)。

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