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December 22, 2012

『ふりかえったら風3』

Kitayama_kaze_3

『ふりかえったら風3』北山修、みすず書房

 昨年から今年にかけて北山修さんの本を読むことが多くなりました。これはご自身のことを比較的よく語った対談集。

 なぜいったんはミュージシャンとして売れたにもかかわらず、医学部に戻ってきたのかということについては《解剖学の実習をすませて、人が見なくてもいいようなおなかのなかを見てしまって、その閉じ方も治し方も知らないままやめるわけにはいかないと思った》というあたりは、妙に納得してしまいました(p.22)。

 《「妄想分裂」とは、世界をきれいで良いものと、怖くて悪いものとまったくの二分法でとらえている状態で、現実はそういうことはありえないので妄想的なのだ》という言葉も印象的です(p.44)。

 日本人には二重人格が少ないというのを、上手に甘えられるからだ、みたいなところから説明していって、外国人の方々がダブルベッドで寝ているなんていうのをみせられると《大変だと思うんですよね。あの自我は》と思うというあたりは笑えました(p.73)。

 これに関連して、西欧人は異人種とコミュニケーションを成立させて共同体をつくらないと社会が成り立っていかない、というあたりから、外国人は「吐き気」を我慢して飲み込もうとするが、日本人は吐いて外に吐露することができるというあたりも面白かった。しかし、だんだんと日本も路上で吐ける時代は終わりにきつつあって、西欧的な「嘔吐恐怖」が日本にも出てくるのではないか、というあたりも、なるほどな、と(p.124)。ディスガストを呑み込んでいかざるを得なくなりつつある、というのは、なんととなく実感としてもわかります。

 一方で、誰かが傷ついたり、誰かが傷つけているような場面を日本人は見ることができないのに対し、外国に行くと両親に対する攻撃性は堂々と表現できると精神科の先生は言うそうです(p.129)。

 北川さんはレインに憧れた世代だと書いていますが、そうした世代論から、日本では統合失調症ばかり見ていて神経症を見なかった、というのが大問題であると指摘しているのは新鮮でした(p.159)。中井久夫先生などが、統合失調症を中心にやってきたのは、昔はほとんどを病院から出られずに発症後はほとんど一生を病棟の中で(しかも悲惨な状況の)過ごさざるを得なかった患者さんたちをどうにかしたい、ということを書いていたことを思い出すのですが、そうした状態がだいぶ改善された頃に北川さんは精神分析医になったんだろうな、と思います。

 そしてレインの先生がウィニコットだというので、いつか、北川さんが訳した本を読もうと思っています。

 境界パーソナリティの話では、ジョン・レノンが境界例ではなかったか、なんていう話が出てきて、さすがにあまり深くは掘り下げられていないんですが、一瞬で理解することができました(p.170)。

 いまの子どもは超自我形成不全といいますか、家庭教育によって超自我システムを身につけていないのが増えてきているのではないか、というあたりも新鮮(p.178)。

 紹介されていた本の中では『政治的に正しいおとぎ話』が笑えそうなので買ってみることにしました。

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