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December 01, 2012

『動的平衡』

Douteki_heiko

『動的平衡』福岡伸一、木楽舎

 2の方を先に読んでしまったのですが、最初のも読んでみました。ダブっている部分も多いのでサラッと。

 年とると1年の経過が速く感じるというのは、よく言われる年齢の分母が大きくなるからではなく、体内時計の秒針としてのタンパク質の分解と合成のサイクルで説明していところは、なるほどな、と。《タンパク質の代謝回転が遅くなり、その結果、一年の感じ方は徐々に長くなっていく。にもかかわらず、実際の物理的な時間はいつでも同じスピードで過ぎていく》《実際の時間の経過に、自分の生命の回転速度がついていけなていない》というのは、これまで聞いた説の中で最も納得的というか、この問題にケリがついた、という感じがします(p.44-)。

 著者が高校生を相手に行った講演で、「私たちを規定する生物学的制約から自由になるために、私たちは学ぶのだ」と答えるあたりもいい感じ。《ヒトの目が切り取った「部分」は人工的なものであり、ヒトの思考が見出した「関係」の多くは妄想でしかない。さらに、私たちの脳は、比例で変化する現象は比較的うまく扱えるが、対数的に増えていくもの、振動しているもの、変化しながら動くものをうまく扱えない》。だから《直感が導きやすい誤謬を見直すために》勉強を続けるべきなのである、というあたりは少し感動しました(p.58-)。

 一般の草木は質量12の炭素と質量13の炭素を選り好みしないが、穀物類は質量13の炭素を好んで光合成を行うので、ある動物の骨を調べて、質量13の炭素がコラーゲンの中に多く含まれていれば、それは家畜だったということがわかる、というあたりも、なるほどな、と(p.64)。

 人間をはじめ、動物の身体はデフォルメすれば中空の管であり《消化管や子宮の内部も、実は身体にとっては外部なのである》というとらえ方も、なるほどな、と(p.70-)。だから、外部である消化管壁を通過して、摂取したタンパク質を内部に取り込むためには、アミノ酸まで分解されなければならない、と(p.74)。そして食べた食品タンパク質とほぼ同量が、それ以上の消化酵素が膵臓から消化管内に送り込まれないと、栄養を取れないそうです(p.89)。

 悪い空気を吸ったから病気になるという説をミアズマ(miasma)説といい、日本語では瘴気(しょうき)と訳されていますが、これってナウシカの腐海という世界観の源なんだ、と思いました(p.168)。

 なんで現代人が肥満に苦しんでいるのか、という答えは、人類はずっと飢えに苦しんできたので、基礎代謝以上のエネルギーを大量にため込むようになっており、今日のような飽食の時代に遭遇することは想定外だったから、というのも、当たり前なんでしょうけども、改めて、そうだわな、と思います(p.93)。今朝も10km走ってきたのですが、それによって消費できるのはショートケーキ1個のカロリーに過ぎません。《運動によるダイエット法の多くが功を奏さない理由もここにある》ということは、拳々服膺していなかければならないと思います(p.99-)。満腹しても警戒のため血糖値をあげていたヒトのグループが多く生き残ったから糖尿病がこれだけ蔓延しているという仮説もあるそうで、怖い怖い。

 《「生きている」とは「動的な平衡」によって「エントロピー増大の法則」と折り合いをつけている》という言葉も覚えておこう、と思いました(p.246)。

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