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November 10, 2012

『元素周期表で世界はすべて読み解ける』

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『元素周期表で世界はすべて読み解ける』吉田たかよし、光文社新書

 何も読むものがなく帰りの本屋で手に取ったのがこの本。筆者近影がなかったので、誰かわからないうちに読み始めたのが、良かったのかもしれません。「サンデージャポン」でテリー伊藤あたりにコメントを皮肉られるあの人か、と思ったら最後まで読めなかったけれど、とにかく最初から引き込まれました。

 文転していたので、もう化学の授業なんかはほとんど無視していて、元素周期表も暗記だと思っていたから、他の暗記ものに差し支えるかもしれないと思って、ほとんど無視していましたが、いろいろ後になってみると面白そうな世界が広がっているんだな、と思うようにはなりましたが、なにぶん、基礎的な素養がないし、入門書っぽいのもハードルが高い感じがしていたんですが、これは当たりでした。副題の通り「宇宙、地球、人体の成り立ち」がスーッと頭に入ってきます。

 化学を大学院で修了し、その後、医師になったという経歴から、元素が身体をどうつくり、どういうような影響を与えるか、ということも興味深く書かれていて飽きさせません。

 原発事故で話題になったストロンチウムはベリリウムから始まる縦列に属します。この系統は最も外側の軌道に電子が2個「回って」います。同じ系列に属するカルシウムによって人体の骨は出来ていますが、このためカルシウムと勘違いされて取り込まれてしまうことが問題だ、と。骨に取り込まれたストロンチウムから出る放射線によって、骨髄でつくられる血球が細胞分裂直後に影響を受け、白血病になりやすい、と。白血病に侵された細胞は2~3年で増え始め、6~7年でピークを迎えるというので、他のガンよりもまず白血病を警戒した方がいいとのこと。

 ここまでが本書の「つかみ」。

 第二章の「周期表から宇宙を読み解く」では、元素が生まれるためには、温度が1000万度を超える必要があるということがまず語られます。この高温によって元の原子の原子核を、別の原子核とお互いに核力が働く距離まで接近する、と。そして、この1000万度以上の高温状態が実現するのは1)ビックバン2)恒星の中で起こる核融合3)寿命が尽きた恒星の「超新星爆発」だ、と。

 バックバンの標準理論によると、100万分の1秒後に素粒子が誕生し、1秒後には水素の原子核が生まれ、3分後には水素の原子核が集まってヘリウムができた、と。このためは原始宇宙は水素が92%、ヘリウムが8%の世界だ、と。こうして出来た水素が集まって恒星がつくられ、核融合によってヘリウムが生み出され、水素が燃え尽きるとヘリウムが核融合を起こして炭素、窒素、酸素と徐々に重い元素がつくられていったけど、核融合でつくられる元素は鉄までだそうです。

 鉄はすべての元素の中で原子核のエネルギーが最も安定しているそうです。

 だから鉄より軽い元素は核融合によって少しでも重くなろうとする、と。

 逆に鉄より重い元素は核分裂をして鉄まで軽くなるうとする、と。

 発電方法は、石油や石炭も「大昔に植物が太陽光のカネルギーを化学結合のエネルギーに返還してできたもの」なので核融合のエネルギーを利用したものといえ、もう一方は結合エネルギーの差を電気的に変換する原子力発電に大きくわけられる、というあたりは文系アタマでもうならされました(p.65-)。

 そして鉄より重い元素の大半は超新星爆発によってできたものだそうです。だから量も少ない、と。

 生物の身体もより多い元素を元にできているわけで、人体も62.7%が水素を占めており、大部分が水で出来ているために次に多いのは酸素(22.8%)となっている、と。次に多いのが炭素、次に窒素ですが、すべて第1周期、第2周期の宇宙生成の早い時期に生み出された物質だ、と。

 後は身体を構成する少量元素の話になっていくわけですが、マイナス1価の塩素が入ってくると塩素脳内のGABAニューロンが働いて眠くなる、というあたりはなるほどな、と。睡眠薬も同じ働きだそうで、だから睡眠薬とお酒を同時に服用するとGABAニューロンに塩素イオンが流入しすぎで制御不能になり、場合によっては呼吸が止まって命を落とすことがある、というあたりは改めて勉強になりました(p.89)。

 健康情報として有り難かったのはカリウムはナトリウム過剰を解消する素晴らしい元素なので、野菜や果物、豆類を多くとることによってナトリウムを体外に捨てよう、という話し。しかし、カリウムはサプリメントとして売っていない、実は取り過ぎると心臓が停止するから、というあたりも面白かったですね(p.129)。

 レアアースで中国大きな市場を持っているのは、原子が比較的重い重希土類の鉱床が中国南部でした発見されていないため、というのも初めて知りました。また、ネオジムやジスプロシウムなどレアアースは外側から2番目の軌道に空席があって原子が潰れたような形状になっており、これを鉄に加えて間に挟むことで、N極とS極が相互にあらわれるような鉄の原子がひっくりかえるのを防げるようになり、そのため強力な磁石がつくれる、と(p.148-)。

 周期表の一番外側の希ガスはすべて軌道に空きがないために、反応しないというのも、なるほどな、と分かりました。

 マッドサイエンティストは、水銀中毒で中枢神経を侵された錬金術師が原型だったというのも初めて知りました(p.185)。

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