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November 16, 2012

『中国人民解放軍の内幕』

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『中国人民解放軍の内幕』富坂聡、文春新書

 中共の指導部が代わり、中国中央軍事委主席には習近平総書記が兼務することが決まったというタイミングで出されたので、思わず読んでしまいました。人民解放軍というのは大きな謎に包まれている組織だと思いますが、とりあえず、わかっているところまでは整理してくれた感じでありがたい。

 中国海軍の中興の祖といわれる劉華清が、八路軍の時から鄧小平との関係が深かったというのは知りませんでした(p.49)。外洋海軍(ブルー・ウォーター・ネイビー)を目指す八五戦略によって、中国海軍は第一列島線の内側から出て、沖縄本島と宮古島の間を抜けて進出するようになりました。最近もワリャーグを改造した遼寧が就役しましたが、カタパルトが旧式な上に、傾斜式の滑走路であるために、30秒に一機ずつ飛びだたせることのできる米軍の航空母艦に比べて、能力が70%落ちるそうです(p.61)。しかし、真っ向から空母戦を挑まなくても(ちなみに空母対空母の本格的な戦いは日米が第二次大戦中に行っただけ)、ASBMと共に接近阻止・領域拒否の戦略をとることも可能かもしれません。

 にしても、尖閣列島での船長逮捕事件が起きた時には徐沖という兵士が楊外相に対してカルシウム・サプリメントをを送りつけて強硬姿勢を示せと迫ったという事件があったというのには驚きました(p.78-)。

 軍事委員会が現在のような整理された姿になったのは鄧小平の時代からで、毛沢東の場合は、ある程度、やりたい放題が効いたようです。林彪の軍内部での力が強大化しすぎたことに不安を感じた毛沢東は、1971年8月に北京衛戍区司令に大きな権限を与えて総参謀部の許可なしに部隊を集結させたそうです(p.103)。その後すぐに「9・13事件」が起こるのですから、まあ、いいタイミングだったんでしょうね。

 その後、毛沢東は73年に一つの軍区に一人の司令官が長く居すぎるという問題を一気に入れ替える人事などによって変え、《野戦軍から引き継がれ、中国共産党指導層にも広がっていた軍閥系派閥を、徐々にではあるが、破壊していく》ことになります(p.119-)。

 また、陸海空軍のほかにミサイルと核を専門に扱う「二砲」という軍種も総参謀部の系統には属さずに、中国中央軍事委に直接指揮される組織としてつくられました。ここらへんも、権力は分散させる、という毛沢東の本能なんでしょうね。

 また、軍系の企業として中国保利集団が、軍や党の幹部の受け皿として大きな役割を果たしているということも縷々説明されています(p.163-)。こうした軍系企業は、400万人を越えていた兵力を半減されるリストラの中で、兵士たちの受け皿にもなっていきます(p.169-)。

 1921年に上海で産声を上げた中共ですが、軍隊さえ組織されていない段階で、党中央には宣伝部が設けられていということは、「我打我的」という毛沢東の考えから出てきていることなんでしょう。だから「田中上奏文」なんていう偽書まで使うという発想が出てきたんだと思います(p.198)。

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