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September 21, 2012

『ナショナリズムは悪なのか』

Nationalism_kayano

『新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか』萱野稔人

 知合いの経営者から、最近読んで面白かったということなので、とりあえず読んで見ましたが、まあ、こんなもんなのかな、という感じの本。

 悲惨な太平洋戦争を経験したことから、日本の戦後において、ナショナリズムは左翼系知識人に嫌われてきたけど、実は、彼らが依拠する西洋の現代思想家たちは、ナショナリズム批判などしておらず、「ナショナリズムは悪」と決めつけるのは戦後日本の特殊事情だということを延々と書き連ねるのが前半。

 唯一、ハッとするような言い方は、先進国における「格差の拡大」の問題は、労働市場のグローバル化によってもたらされたもので、それが問題なのはナショナル・インタレスト(国民的利害関心)でとらえるからであって、中国などの労働者からみれば格差は縮まり、就労機会が増える「格差の縮小」であり、国内的にのみ、それは問題になる、というあたりでしょうか(p.21-)。

 でも、そうした問題は著者が論争相手と仮定していると思われる上野千鶴子さんあたりの本を読んだって、問題意識はもっているわけだし、例えば『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります』では、ナショナリズムと福祉はワンセットだけど、日本のナショナリストは国民よりも国体が大切という立場が問題だ、という指摘だってあるわけで、なんか団塊の世代の評論家という仮想の存在を相手に論争しているようにも思えます(上野の前掲書p.159にある自民党政権などは「だから少子化対策といってもシングルマザー支援なんかはやらなかった」という指摘の方が、よほど鋭く感じます)。

 後はアーネスト・ゲルナーの「政治的な単位と文化的あるいは民族的な単位を一致させようとする思想や運動」という定義からのインターナショナリズム批判。

 でも、この定義自体、スターリンの「民族とは、言語、地域、経済生活、および文化の共通性のうちにあらわれる心理状態、の共通性を基礎として生じたところの、歴史的に構成された、人々の堅固な共同体である」という定義の焼き直しなんじゃないの、と個人的には思っています。

 さして後半は留学先だったというフランスから、いまさらのドゥルーズ=ガタリ、フーコーの解説。しかし、いまさらフーコーの「身体の規律化」とナショナリズムを結びつける議論は吉見俊哉さんあたりだってやっていたわけだし…と思ったのですが、まあ、いいか。

 最近、『失敗の本質』みたいな本まで入門本が出てきて驚いているんですが、これも、フーコーの『監獄の誕生』の超入門として読めば、読めないこともないんですかね…(フーコーの『監獄の誕生』は確かに面白いですしねw)。

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