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August 08, 2012

『民主主義という不思議な仕組み』

Democracy_sasaki

『民主主義という不思議な仕組み』佐々木毅、ちくまプリマー新書

 佐々木先生が民主主義について、ポリスの時代から、その不思議さを説き起こしてくれた本。

 佐々木先生の本をうまくまとめる力量はないので、例によって、箇条書き風に…。

 佐々木先生によると、ペルシャ戦争における決定的な転機になったのが漕ぎ手を大量動員することが必要だったサラミスの海戦であり、そのために経済的に余裕のない人々も影響力を持つ体制へと変わらざるを得なくなったといいます。その結果、貧しい人々には日当を払って政治に参加してもらい、人事はくじ引きで決めるという古代民主制の頂点に達した、と(p.27)。

 中世ヨーロッパはローマ教皇が絶対的な権威を持つ一種の信仰共同体であり、カノッサの屈辱の意味は、皇帝が教皇から破門されると、臣下が皇帝に対する服従義務から解放されて、皇帝権力が一気に雲散霧消したことだった、と(p.39)。

 「万人の万人に対する戦争状態」は自然権による自然法の破壊だが、お互いの共存のために自然法による自然権の制限が承認されるようになり、基本的人権の台頭は、特権の見直しを促しただけでなく、自由平等の考え方による支配服従契約の見直しにつながった、と。そこで登場したのが、自由で平等な人間による互いの契約という社会契約論の発想だった、と(p.43-)。

 《一言で言えば、人間の持っている基本的人権に適合する政治の仕組みは、民主政治しかない》(p.59)。

 しかし、ご本尊である大衆は、「本能と衝動の束」であり、政治家たちによって操作される存在である、というペシミズムに満ちた論議がすでに二十世紀前半には出てきており(p.94)、やがて「大衆は自然の一部である。彼らが欲しているのは、強者の勝利と弱者の絶滅、全面的な屈服である」というヒトラーが出現する(p.105)。

 その反動もあって、戦後は「合意の政治」が旗印となり、70年代中葉にかけて各国の貧富の差は小さくなったが、70年代後半から税負担の軽減要求と結びついた「小さな政府」の実現を求める「対決の政治」が登場してきた(p.147-)。

 小泉流の改革でも典型的なように、「小さな政府」論はあくまで、大きな無駄があるから魅力のあるメッセージになるのであり、何かをつくるものとしては物足りない。《より合理的な「利益政治」を実現することが変わらぬ課題なのです。例えば、目先の利益ばかりに目がいって長期的な利益を無視し、将来の世代に過大な負担を残すようなことは慎まなければなりません。また、今では政府の政策、その経済・財政政策は国際市場で評価される時代であり、そこでの信用の失墜によって国民生活を崩壊させるようなことをしてはならないのです》(p.150-)。

 《教育に対する日本政府の支出は、対GDP比で諸外国と比べて極めて少なく、関係者の努力と家計への負担の転嫁によって、これまでなんとか「もちこたえて」きましたが、その限界はすでにはっきりしています。財政支出を増やさなければ、「出口」である高等教育の基礎は崩壊に瀕し、それは、例えば、医療サービスに必要な人材を確保できないといった事態につながるに違いありません》(p.155)。そこで必要なのが格差を見て見ぬふりをするのでなく、ナショナル・ミニマムを設定して、それを守ること。

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