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July 10, 2012

『つげ義春の温泉』

Tsuge_onsen

『つげ義春の温泉』つげ義春、ちくま文庫

 つげさんは、乞食小屋のような建物がポツンとあるような温泉というか湯治場というか鉱泉が好きだそうで、個人的にはとてもそういったところには泊まれないのですが、二次元ならつげさんの描く世界にも惹かれるように、この本というか写真集+エッセイ本も帰りの電車の中で一気に読みました。

 写真は全てモノクロ。ご本人の趣味は確かレンズ磨きだったと思うのですが、なかなかの腕前で、思いだしたのが宮本常一さんの写真。宮本さんが訪ね歩いたような「失われた日本」の風景が次々と展開されていきます。

 その温泉宿というか、本当に乞食小屋のような土間でおそらく自炊したご飯を頬張るおばちゃんたち、床が抜けそうな風呂場で骨と皮になったような身体に湯をかける老婆、つっぷして動かないお爺さんなど、すごい写真が続きます。

 撮られた年代は昭和40代から60年代ですが、とても、そんな感じには思えません。

 戦前というか、江戸時代から基本変わっていないんじゃないかみたいなすさまじい風景です。

 いつか《開放的な温泉とくらべ、鉱泉はどことなく日陰臭い味があるのがだんだん解るようになってきた。イメージとしても、沸き立つ温泉より、青緑の冷ややかに澄んだ冷泉のほうが、気持ちに浸透してくる何かしら濃いものがあるように思える》(p.178)

 ようなところに行ってみようかと思います。

 あと、『つげ義春を旅する』も読んでみることにしました。

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