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May 26, 2012

『財政学から見た日本経済』

Doi_finace

『財政学から見た日本経済』土居丈朗、光文社新書

 もう、この本が出てから10年近くたったのに、まだ、財政再建の緒にもついていないけれど、その日本の状況を追い越すような形で欧米が暴走して金融緩和して、中国も財政政策もやりまくったおかげで、たった今現在は、ドルもユーロも元も対円で全面安という、ちょっと信じられない状況が生まれています。

 考えてみると、日本も消費増税とか抜本的な財政再建には程遠いことしかやっていなかったけど、薄紙一枚の差にも関わらず常に金融緩和には慎重な姿勢だったし、メチャクチャなことはやってこなかったのが、この結果なのかな、と。

 もちろん、家庭や企業と比べれば、平均的には長い寿命をほこる国民国家にせよ、借金がGDPの何倍にもなって、少子高齢化が進んでいれば、深刻な状況になっていることぐらい当たり前だろうし、増税反対派が「増税で税収が増えるわけではなく、まず経済成長を」というけど、経済成長によって債務比率圧縮に成功したのは1985年のスワジランドだけだという現実には、どう答えるんでしょうかね。

もうギリシアみたいな最悪の景気後退局面で緊縮財政をやるか、それとも、少し余裕がある中で、不景気を招いても財政再建やるかという、どちらのダメージが少ないかという問題でしかないと思うのですが…。

 もう10年前になったしまったこの本の後も、土居丈朗さんは、去年6月の日経書評欄で「日本政府は、今や巨額の借金を抱え、今後も増え続けると予想されている。その主因は高齢化による社会保障費の増加で、経済成長のスピードよりも速く増えるので、支出が多すぎるのではなく、収入が足らないから借金が増えるのである」と至極もっともなことを書いて、危機感を訴えています。

 また、この本で書かれている、成長分野にカネが回らない大きな原因として指摘されている定数是正も、まだ手つかずです。

 政権交代の次に目指すべきなのは、展望のない先祖帰りでもなく、地方ポピュリストへの全面委譲でもなく、定数是正を通じた、多くの人々のフツーの考えが反映される、当たり前のシステム構築なのかもしれません。

 横浜に住んでいると、同じ税金を納めていても、衆議院だと山陰の5分の2、参議院選挙だと5分の1というのなら「それなら税金を少なくとも半分以下にしてほしい」と思わず言いたくなる人もそろそろ出てくるんじゃないかと心配になってきます。

 《人口の多い都市部に国会議員が相対的に少なく、人口の少ない地方部に国会議員が相対的に多い状況は、あまりにも筋書きが見え見えで、民主主義のミの字もない》《格差は限りなく完全に是正するのが当然というものである。二倍以内でも不十分である》

 という土居さんの主張は当たり前だと思うんですがね(p.91)。

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