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March 09, 2012

『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります』

Ueno_komaru

『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります 僕らの介護不安に答えてください』上野千鶴子、古市憲寿、光文社新書

 相変わらず上野千鶴子さんのケア関係の本を読んでいます。

 上野さんみたいに「世代間対立ネガティブキャンペーンに簡単に乗ってしまうような人たちや、既得権益に憧れ続ける人たち」とまでは思ってまではいなかったものの、前から団塊ジュニア世代の、特に男の子たちに個人的に感じていた「エディプス期の希薄化という問題があるんじゃないのか」という疑問は、見事に説明してくれたかな、と思います。それは、別の言葉で言えば《親が死ぬのが怖い世代》なのかな、と(p.36)。《自分が庇護される側のまま、一生子どもとして生きて、子どものまま死にたい。団塊世代はこういう子どもを育てたのか!》という上野さんの嘆きももっともだな、と(p.38)。

 しかし、経済的な問題に関しては古市さんも、団塊世代を批判するんですよ。「会社以外では何もできない」「そもそも会社できちんと働けているのか疑問」だと。それに対する上野さんの答えは暴投気味。「団塊世代は親からの援助が得られない人がほとんどだったから、何がなんでも歯を食いしばって就職せねばならんという覚悟はあった」と。しかし、たまたま高度成長に乗った、たった「いち世代」の蓄積なので、蓄積度合いが低い「成り上がり」者が多いから、遺産相続者である子どもを甘やかして育てた、と。ぼくは、実感がないからよくわからないのですが、例えばアメリカなら、奨学金を取って苦学している金持ちの子女はいっぱいいる、というんです。アメリカなどでは、そうした厳しい大学時代ぐらいはクリアする必要があって、遺産相続者であるための資格条件は厳しいんだ、と(p.33-35)。

 「成り上がりは長期にわたる予期をしない」という言葉も切れ味が鋭い(p.41)。団塊の世代の親たちが、自分の一生を対価に得たのは、モーゲージローンにも耐えられないようなペナペナな家かマンションであり、それは売ったら自分の住むところがなくなるので資産ではないし、だいたい、本当の中間層というのは、家以外に投資できる資産がある層を言うのだ、と。

 とはいっても、柄谷行人さんの「子育てに、成功はない」という言葉と(p.251)、ある人が上野さんに言ったという「世の中に未熟じゃない親はいない」(p.67)という言葉は印象に残りました。

 肝心の介護に関しては、そのニーズが介護を担わされていた中年層と、それを大きくまとめた連合によって介護保険が生まれたというあたりは、なるほどな、と。「介護1000万人の輪」はいつかチェックしてみよかな、と。

 上野さんは、以前はコレクティブハウスみたいなところで余生を送ろうと思っていたというのですが、介護保険が機能しているならば、最後までひとりで住んで、ヘルパーさんに4時間かごとぐらいに訪問してもらい、その方が「あら、もう息していないわ。でも、まだ暖かいわ」というのがベストではないかと考えているそうです。

 あと、ナショナリズムと福祉はワンセットだけど、日本のナショナリストは国民よりも国体が大切という立場だというのも、実によくわかる話だな、と(p.159)。だから少子化対策といっても、シングルマザー支援なんかはやらなかったんだな、と。

 また、、正規社員でも、見なし残業で、残業代少ししか払ってもらえなかったら、非正規雇用の時間当たりの賃金と変わらないっつうか、それぐらいが、国際分業時代の平均なのかな、とも感じましたかね。

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