« ドライブインいとうの月見豚丼 | Main | 六甲のカツカレー »

February 02, 2012

『政権交代とは何だったのか』

Seiken_koutai_yamaguchi_jiro

『政権交代とは何だったのか』山口二郎、岩波新書

 なるほどと思ったのは、自公が「バラマキ4K」と批判した子ども手当や高校無償化などに対して、民主党は「公明正大な再分配である」と反論すればよかっただけなのに、それができなかったのは、明確な理念を共有していなかっためだというあたりと(p.41)、《批判を受けたら逆上し、批判者自体を殲滅しようとする点で、河村、橋下などは、オルテガの言う「慢心した坊や」であり、彼らは「大衆の反逆」の先頭に立っている》《議会や批判的な学者が上から目線で攻撃すればするほど、ローカルポピュリストはそうした批判をアジテーションの材料に利用し、デマゴーグを翼賛する大衆のエネルギーは燃え上がる。その点が厄介である》と河村、橋下など批判するあたりでしょうか(p.222-)。

 河村、橋下批判に関して《減税も大阪都構想も、社会の疲弊や生活の困窮を解消することとは何の関係もない思い付きである。しかし、それを特効薬のように思わせるところが、彼らがデマゴーグであるゆえんである》というところを含めて、なかなか冴えているな、と思います(p.219)。

 ぼくも、民主党には正直、ガッカリしていますが、同じように国立大学の教授という立場からすれば、かなり大胆に政権交代のお先棒を担いだ山口教授にすれば、より絶望感は深いと思います。

 この本でも《自由と解放の後に幻滅の感が来ないとしたら、そっちの方が不思議なのである》《民主主義は、それ自体に、これが民主主義か?という幻滅の感を、あらかじめビルト・インされたform of government(統治形態)なのであった》という堀田善衛の「出エジプト記」『天上大風』筑摩書房から引用していますが、たった一度の政権交代ですべてが変ると考える方が非現実的だと思いますし、失われた20年間も自民党にボンヤリと政権を任せていた時代のツケは、それほど簡単に払えるものではないと思っています。民主党に絶望し、自公も頼れない今、問題解決はオレに任せれば簡単だとデマを振りまく橋下、河村などのローカルポピュリストに権力をもし握られたりしたら…というのは、かなり怖い想定だと思っていますが、まあ、それはこれぐらいにして…。

 自民党時代、内閣に対して法案提出前に総務会への連絡と承認を求めたのは池田政権当時の赤城宗徳総務会長だとは知りませんでした。赤城さんは防衛長官だった時に、安保闘争のデモ隊に自衛隊の治安出動を求めた岸総理の打診をキッパリと断った方ですが、改めてなかなか政治家だったと思いますね。まあ、その孫がバンソーコー農相の赤城徳彦だったわけで、二世、三世議員がいかに劣化しているかの証左でもあるわけですが。

 また、民主党が目指した政治主導については官房総務課長以外の政務三役への接触禁じたり、三役が電卓を叩いて予算の見直しをしたり、長妻昭厚労相のように官僚に対してマニフェストの携帯を命じたことは《自信の欠如の表れ》であり、《政治指導者が官僚の助けなしに政策形成を行うことは不可能である》と振り返っているあたりは、個人的な経験からしても「なにを舞い上がっていたんだろうな…」と思います(p.80-)。そして、政務三役になれなかった民主党議員が従順にベンチに座っている「バックベンチャー」ではなかったことも、混乱に輪をかけました(p.86)。

 旧社会党の議員たちが官僚から勉強を教わっているうちに1年ぐらいで終ってしまった細川、羽田内閣の時と比べれば少しは進歩したかもしれませんが、期待が大きかっただけに、残念でなりません。それにしても「消えた年金記録」のデータ照合が挫折したからといって、その中で元三号被保険者の存在が大量に浮かび上がったので、それを課長通達で救済するぐらいしか思いつかなかったというのは寂しい限りでしたね(p.128)。野党時代にずさんな管理を批判するのとはリアリティが違いすぎる、といったところなのでしょうか。

 印象的だったのは内閣参与にもった年越し派遣村の湯浅代表が、市民活動家が政策を実現できるかは、その市民運動の厚みを反映している、と書いているのはなるほどな、と(p.146)。

 それと、野党がもし政権をとった場合でも、編成する予算の税収がわからないままマニフェストを書かざるを得ないことを考えれば、3.11を例に挙げるまでもなく、あまりにも激しい環境変化の中では、理念的にならざるを得ないのかな、と思います。

 民主党はイギリスのウェストミンスターモデルを念頭に置いて政権運営を目指しているようですが、元々、ほとんど自然災害がないような国のモデルを持ってきたこと自体が間違いなのかもしれません。

|

« ドライブインいとうの月見豚丼 | Main | 六甲のカツカレー »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/23829/53885766

Listed below are links to weblogs that reference 『政権交代とは何だったのか』:

« ドライブインいとうの月見豚丼 | Main | 六甲のカツカレー »