« 『僕は自分が見たことしか信じない』 | Main | 『十字軍物語3』 »

December 17, 2011

『おひとりさまの老後』

Ohitorisana

『おひとりさまの老後』上野千鶴子、文春文庫

 けっこう、この手の問題は、マジメに考えている方でして、あきらかにグループホーム的なものがいいかな、とは思っているんですが、はたして自分でそれを建てて、運営していく気力が残っているかな…ということをずっと考えつつ(つか、周りを見渡すと、現実処理能力的には自分がやるのが一番安心だ、みたいなことも思っているんですが、根気が…)、いくら高い優良老人ホームとはいっても、けっこうリスクは高いと思っているので…とか、下手な考え休むに似たりみたいなことをやっています。

 これは現在、パートナーと住んでいる方でも問題だと思いますし、実は、そっちの方が、いざ「おひとりさま」になったら強いショックを受けて老後を過ごす可能性が高いんだと思っています。

 それは「はじめに」のこの言葉を読めばすぐにわかること。

《長生きすればするほど、みんな最後はひとりになる。
 結婚したひとも、結婚しなかったひとも、最後はひとりになる。
 女のひとは、そう覚悟しておいたほうがよい。》

 そして、これは「女のひと」だけに限った問題ではないことは、上野さんが続編として書いた『男おひとりさま道』をみてもわかること。とにかく、だれでも老人にはなるし、考えてみれば、誰でも老いる経験も初めてすることなのわけで、無難に過ごすためにはスキルとノウハウさらにはインフラが必要になってきます。

 といいますか、そういったものが必要になるんで、みなさん、真剣に考えましょうね、というのが上野さんのスタンスだと思います。

 上野さんはフェミさんで、ちょっと苦手な感じがしていました。だから、実はこれが初めて読ませていただく御著書。テレビを見ていた時に男女雇用機会均等法に関して「社会は少しずつしか変わっていかない。でも、それが大事じゃない」なんてコメントしていたのを聞いて、一気に好感度があがったんです。

 ということで、いつものように印象的なところを…。

 パライトシングル増加の原因を母親に求めている視点はなかなか素晴らしかった。夫と二人きりになりたくないという妻にとって、子どもは大事な資源だというんですな(p.31)。なるほどね、と。こういうのは確かにあるかも。

 80年代末の年金改革で第3号被保険者として、妻は保険料をもらわなくても年金をもらえるようになったわけですが、これを「オヤジの看取り保障」と看破するところはさすがだな、と(p.55-)。

 介護保険以前に建てられたケア付有料老人ホームは、倒産などされたら明日からの行き場がなくなる、というのは確かに大きなリスクだと思っていました(p.67)。しかも、要介護となってからもケアの質の管理はできません。ケアの質と料金は相関しない、というのは重い言葉だと思います。

 さらに、小学校以来、偏差値で輪切りにされた文化の中で基本的な社会生活を送ってきた多くの人にとって、ごった煮のデイサービスは楽しいか?というのもなるほどな、と思いつつ、「ああ、上野さんは、団塊の世代の女性だから、例えばサッカーのサポーターグループなんかは参加したことないんだろうな」なんて思ったりして(p.82)。

 しかし「個室を経験した身体は、もとのように雑魚寝文化へは戻れない」というのは真実だな、と(p.85)。ドミトリーみたいなところは勘弁してほしい…。

 さらには、老人になれば極上のセックスなどにありつける可能性は少ないわけで、それなら「ベッドメイトよりも、おいしいごはんを一緒にたべてくれるテーブルメイト」の方が重要になってくる、と(p.121)。この続きに書いてあるんですが、ぼくも上野さんと同じだな、と思うのが、ひとつのテーブルで同じ話題を共有できるのは7~8人までだから、理想的には5~6人のひとと食卓を囲みたいというあたり。ここらへんは、実にわかるな、と。

 AV監督にして男優という二村ヒトシさんの「あなたの居場所とは、ひとりっきりでいても寂しくない場所」という言葉は印象に残る引用でした。

 ストレスは女と同様にあるだろうに、それを正直にはき出せないから自殺が多いんじゃないか、なんていう突き放した言い方も、ぼくは好感が持てます(p.140)。甘えられても困るけど、ひとりで突っ張っているのを見ると、やんなっちゃうこととかありますもんね。

 そして極めつけは「ほんとうにほしい介護は、カネでは手に入らない」という言葉(p.146)。上野さんは老人社会主義を標榜しているのですが、まさに、そうだな、と。年とっていけば、カネの交換価値は漸減していくわけですよ。100億円もっていていも、明日死にそうな状態だったら、主観的な価値はほとんどゼロなわけです。でも、人間はいつ死ぬかわからないから、キレイにおカネを使い切って死ぬのは難しい。だから、ベーシックなところを金融商品で確保するということになるんだと思いますが、為替のリスクはあるし、ここ数十年間続いてきたような安定的な世界システムは急速にタービュランス状態になってきていますしねぇ…。まあ、そんなことを考えても仕方ないのかもしれませんが。

 さらにヘルパーさんなどが職業として行う以外の異性間の排泄介助は、性交渉した相手じゃないと出来ないと言われているけど、セックスレスだと拒否されるかもとかも気にさわってくる人は少なくないんじゃないでしょうか(p.180-)。

 『男おひとりさま道』も読んでみることに。

|

« 『僕は自分が見たことしか信じない』 | Main | 『十字軍物語3』 »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/23829/53506408

Listed below are links to weblogs that reference 『おひとりさまの老後』:

« 『僕は自分が見たことしか信じない』 | Main | 『十字軍物語3』 »