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December 31, 2011

『日中もし戦わば』

Japan_vs_china

『日中もし戦わば』マイケル・グリーン、張宇燕、春原剛、富坂聰

  緊迫シミュレーションということで、日米中の専門家たちが、もし日中戦争が起こったら、という想定で、議論を戦わせています。

 一番、核心的だな、と思ったのは、尖閣列島の「支配」という意味には国際法上の観点から二つ意味がある、ということ。それは、領土を管轄下に置いているということと、保有しているということの違い。

 2010年に尖閣列島で問題が起こった時に、クリントン国務長官は尖閣列島は日米安保条約の第五条の発動対象となることを明言しましたが、これは、単に日本が尖閣列島を管轄下に置いているということを認めているということであり、保有しているとは必ずしも認めていないということになります。

 込み入っていて、あまり意味がないような議論に聞こえるかもしれませんが、日本が尖閣列島に自衛隊基地を建設して駐屯させた場合のシミュレーションをすれば、その違いは具体的にわかります。

 グリーン氏は《もし陸上自衛隊が米国に相談することなく、尖閣に駐留することがあった場合、ワシントンには衝撃が走り、米政府の人間は「日本を信用していいのか」と自問するになるでしょう》と語ります。日本政府かポビュリズムの圧力に負けて尖閣に駐屯したとなれば、米国政府内の意見は分かれ、その機に乗じて中国は戴秉国国務委員などを送り込み、米国務長官と会談して、こう言うと言うんですね。「日本はとても危険だ」と。その結果、日本は孤立を深め、立場を弱めてしまうであろう、と(p.78-)。

 同じことは、実際に逆の立場で起こっているとも指摘されています。尖閣では、中国が恫喝したことで「中国脅威論」が世界中で沸騰し、計り知れないほどの外向的損失をこうむり、外国企業が対中投資を考え直すキッカケを生んでしまったわけですから。

 来年の経済の見通しを語ることは、八卦みたいなもんですが、11月ぐらいから、急速に中国経済が悪化し、特に不動産価格の下落が顕著になってきたことは、少なくとも世界経済にとってはマイナスに働くと思います。こうしたことに至る経緯には、様々な要因はありましたが、そのひとつに尖閣の問題も少なからず影響わ与えている可能性はあると思いました。

 その場合、もうこれ以上は床屋政談になってくるかもしれませんが、中国共産党指導部は軍部に対するシビリアンコントロールの効き具合の不確かさと、危機が生じた場合に、ブッシュ大統領が指摘しているように「自体のはあ行くと対応の協議にかかりきりになって」しまい(p.216)、ある種の空白が生まれてしまう傾向があるのは、懸念されるかな、と。

 それと、東日本大震災の時に発動されたトモダチ作戦は、軍事上でも、とてつもなく重要な意味を持つ作戦だったんだな、と改めて思いました。

 戦争の8割は、この本でも書かれている通り、ロジスティクス(兵站)で決まります(p.209)。

 そして陸海空24万人の半数近い10万人の自衛隊員を動員して行われた日本側の復旧・復興作戦に、米国も朝鮮半島有事や台湾海峡動乱の時に結成される「JFT519」という陸海空の統合任務部隊(Joint task Force)が参加しました(p.206-)。

 実は、日本がJFTを発動したのは、今回の東日本大震災が初めてのことで、はからずも「トモダチ作戦」は史上初の「日米JFT統合作戦」となり、しかも、かなり見事に機能した、と。当然、ロシアと中国は気になって仕方ないので、偵察機やヘリを飛ばしてきて偵察したわけです。

 不測の事態にあったにもかかわらず、実戦に近い障害を乗り越えてしまい、大きな成果を上げた日米両軍に対し、例えばロシアと中国が演習をやると、かなりの数の犠牲者が出るそうで、事故があまりに多いことから、ロシアは「もう一緒にやりたくない」と嘆いたという話まで伝わっているそうです(p.210)。

 また、米軍に日本に駐屯しているということは、もし日本を核兵器で攻撃した場合、すぐに米国の参戦を招くでしょうが、もしいなかった場合はどうなるのか、ということも考え直す必要だあるな、と感じました。横須賀と厚木に米軍がいることは、首都圏を守るという意味からも大きいことなんだな、と。

 また、もし橋下市長らが大阪都構想を実現した場合、伊丹か関空に、大規模な米軍の駐屯地をつくり、沖縄などから受け入れることも考えないと、せっかくこれからインフラ整備をやろうとしても、灰燼に帰するような可能性もあるところに、誰も投資しないんじゃないかな、なんてことまで考えてしまいました。

 ということで、いろいろ書いてきましたが、これで今年は終わりにします。

 来年がフツーの年であることを願ってやみません。

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