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November 13, 2011

『人工衛星図鑑』

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『人工衛星図鑑 はやぶさへの道のり』武部俊一、朝日新聞出版

 朝日新聞の科学部長、論説委員もつとめた、いわゆる「科文記者」による、スプートニクからはやぶさ、かぐや、あかつき、ニュー・ホライズンまでの歴代人工衛星についての解説。ひとつ一つの衛星について、その目的、成果、与えた影響などをまとめています。

 単行本は07年なので「はやぶさ」ブームの前に出たのものですが、文庫化にあたって、その後の衛星も加えるなど良心的なつくりになっています。

 略奪型ではない同じ版元の本からの文庫化なので、こういったこともできるんだと思いますが、巻末の索引の充実ぶりも含めて素晴らしいと思います。

 ナチスドイツのV2ロケットは秒速1.5kmでハーグからロンドンまで飛んだけど、地球を回る人工衛星に必要な「第一宇宙速度」は秒速7.9km(約マッハ24)。さらに太陽を回る人工衛星に必要な「第二宇宙速度」は秒速11.2km、太陽系を脱出するために必要な「第三宇宙速度」は秒速16.7km、というあたりから入るのがわかりやすい(p.7-)。ちなみに、第三宇宙速度を得て太陽系外縁部まで達しているのは、パイオニア10号、11号とヴォイジャー1号と2号だけだそうです。

 最初の人工衛星スプートニクはIGY(国際地球観測年、1957年)に沿って打ち上げられたことが強調されたとか(p.25)、米が対抗して打ち上げたエクスプローラー1号によってヴァン・アレン帯が発見されたとか(p.33)、ヴァンガード1号の加速度のふらつきによって地球が洋なし型をしていることが発見されたとか(p.36)、改めて「外から見る」ってことは重要なんだな、と思いました。

 また、洋なし型であることを発見したヴァンガードは22世紀ぐらいまで地球を回り続ける最古参衛星だとか、GPSは原子力潜水艦から発射されるポラリスの命中精度を上げるために1960年に打ち上げられたトランジット1Bが祖先だとか(p.58)、ガガーリンは農民の子でもヒーローになれるというという社会主義国家を演出する人選だったふしもあるとか(p.64)、63年に初の女性宇宙飛行士となったテレシコヴァはひどい宇宙酔いの末にパニックに陥ったことから82年まで女性が飛ぶことがなくなったばかりでなく今でも「唯一の宇宙女性一人旅」の記録を持っているとか(p.77)、ヴォイホート2号で初めて宇宙遊泳したレオノフが『2010年』で木星に向かう宇宙船の名前に使われているとか(p.94)、コスモス954号とか原子炉や原子力電池を積んだ人工人工衛星なんかがよく地球に落下しているとか(p.232-)、そうした批判に対するソ連の見解は「生命に対する危険性はたばこ以下」というものであるとか(p.237)、いろいろ楽しい。

 日本関係でも宇宙電波望遠鏡は日本人の考案であり、「はるか」は国際宇宙航空アカデミーからミール、スペースシャトル、SOHO、ハッブル宇宙望遠鏡に続いてチーム賞を受賞しているとか(p.313)、内閣衛星情報センターが管理する北朝鮮を偵察するためにIGSがすでに9機が打ち上げられているとか(p.337)、いろいろ学ばせてもらいました。

 レンジャー7号による月のクローズアップ写真に+とかのターゲットが映り込んでいるなんてのも懐かしく見ました(p.82)。アポロ11号の月着陸に関して、わずか56年前の南極スコット隊は遭難が明らかになったのが一年後だというのに、月探検はライブで見守られた、というのは、すごい対比だと思います(p.138)。また、「米ソを除けば世界初」というのが70~80年代の日本の宇宙開発の自虐的ジョークだったというのも思い出しました(p.209)。

 ということで「あかつき」の再投入の成功を祈って、本を置きます。

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