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November 19, 2011

『海戦からみた太平洋戦争』

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『海戦からみた太平洋戦争』戸高一成、角川ONEテーマ21新書

 戸高一成さんが議論に参加していた『徹底検証 日清・日露戦争』(文春新書)でも、太平洋戦争における帝国海軍の問題点の解明はかなり新たな視点で進められているな、と感じましたので、このONEテーマに絞った本も読んで見ました。

 戸高さんは『海戦からみた』シリーズとして出してきた日清、日露戦争のシリーズと同じように、シンボルとなる海戦を中心に全体を概観する、という構想で進めていきますが、太平洋戦争の場合、それは「マリアナ沖海戦(あ号作戦)とレイテ沖海戦(捷一号作戦)」だとして《日本海軍は、米海軍の戦艦部隊との決戦を夢想しながら、遂に米戦艦部隊と遭遇することなく、米軍の航空攻撃によって消滅してしまった》とまとめています(はじめに)。

 また、緒戦の大勝に勝ち誇り、軍令部よりも連合艦隊が作戦構想・立案をリードしていったのも問題だ、とガバナンスの問題も指摘しています。

 真珠湾攻撃も連合艦隊の山本五十六司令長官のほぼ独断で作戦計画が進められていきましたが、そのおかげで「開戦劈頭有力な航空兵力によって敵本営に斬り込み、米海軍をして物心ともに当分起ち難いまでの痛撃を加」え「米国及び米国民をして救う可からざる程度に其の志気を喪失せしむる」という目的が機動部隊の南雲長官や草鹿参謀長らに明瞭に伝えられていなかったのではないか、という可能性が高いということを今回、初めてしりました。

 だから第一航空艦隊はハワイに350機による一撃を加えると、重油タンクや工廠を目標とした第二撃を加えることなく離脱してしまい、米海軍が早期に立ち直るスキを与えてしまったわけですが、その背景にある問題として山本長官が《日米戦回避のために自分が払った努力を無視して日米開戦を招き、かつ勝算の期待できない漸減邀撃作戦にとらわれていた海軍中央に強烈な反感を持ったいた。それでなく、自分の心中を他人に理解させようと努力》しないタイプだったということを指摘しているんですね(p.51-)。

 そして有名な「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」という言葉は、どう考えても山本長官のキャラクターを表したものとは考えにくく、実際、この言葉が山本本人の発言であることは判然としていないそうです(p.54)。

 阿川弘之は『山本五十六』で、戦争回避を目指しながらも、真珠湾攻撃への技術上の問題点が次々と解決されていったことへの葛藤について《鍛えに鍛えた刀を、一度は実戦で試してみたいという軍人特有の心理》《長い間"腰抜け"と罵られてきたことへの反発、郷党の人や女たちに"さすが五十(イソ)サンダテガニ"と思わせてみたいという心理》を描いているそうです。しかし、そこには、かえって相手を刺激して交戦意欲を高めるということへの考慮がなかった、と(p.63)。

 南雲機動部隊が空母を第一目標とするよう要望したのを却下して戦艦を第一順位にしたのは山本長官だったというのも意外でした。そして、知米派と思われていた山本長官には、米国人の親しい友人と交わした書簡などは見あたらず、こうしたあたりにも米国の国民性を見誤った原因があったのではないかという指摘もなるほどな、と(p.65-)。

 こうして真珠湾攻撃という大博奕には勝ったものの、日本海軍は夜郎自大となり、国力を遙かに超えた米国と豪州を遮断するためのFS作戦(フィジー・サモア作戦)を構想するまでになった、と(p.72-)。さらに、図上演習では4隻の空母が撃沈という結果が出たにもかかわらず、航空攻撃への備えを忘れたばかりではなく、索敵をも軽視して4隻の空母を沈められ、優秀な艦長やパイロットも失ってしまうという結果を生みます(p.80)。

 それだけでなく、無謀なFS作戦のために補給線の伸びきったガダルカナル島飛行場を奪還することに、なんと「復仇」の念で挑んだため、さらに大きな損失を受け《日本はこれらの損失を回復することはなく、一九四五(昭和二十)年の敗戦を迎える》という負のスパイラルに突入していくことになるわけです(p.88)。さらにソロモン諸島作戦で、ガダルカナルをはるかに上回る航空機を損失し、再起不能になっていきます。これに山本長官に代わった古賀峯一長官の殉死も加わり、海軍の指揮系統は混乱。さらには福留参謀長が作戦計画書を奪われるという不始末まで発生する、と。

 マリアナ、レイテに関しては書くのも辛いので、これぐらいで終わりにします。

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