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October 16, 2011

『国会議員の仕事 職業としての政治』

Works_of_senator

『国会議員の仕事 職業としての政治』林芳正、津村啓介、中公文庫

 「週間東洋経済」の2011年夏ベスト経済・政治書の政治書第2位がこれ。個人的には経済関係も含めて、このほか読んでみたいと思ったのは『国家は破綻する 金融危機の800年 』カーメン・M.ラインハート、ケネス・S.ロゴフと『財政規律と予算制度改革 なぜ日本は財政再建に失敗しているか 』田中秀明ぐらいでしょうか。

 それはさておき、この本は自民党の二世議員と民主党の候補者公募出身という対照的な二人の生まれてから議員になるまで、そして議員としての活動、さらには直近の問題意識について対比列伝のような形で時系列をあわせて読ませてくれますが、やはり面白いのはサラリーマン家庭から国会議員となった民主党の津村啓介議員の話。

 津村議員は「われら団塊ジュニア世代」というところから生い立ちを語りはじめます。将来は物理学者になる夢を持ちながら麻布高校三年の一学期に化学で赤点を取ったことから文転し、「私法コースは司法試験、公法コースは国家公務員、政治コースはマスコミ就職」という東大法学部でも、有力官庁に上位の成績で入るためには専門科目の「優」が10個以上必要だからということで、比較的「優」を取りやすい政治コースを選び、日銀に入ったという戦略は《政治の世界はコネクションの世界だが、自分にそれはない。コネクションのない先輩たちは霞ヶ関や民間企業で立派に社会に貢献している。それが日本だ》というクリアカットな割り切りとともに、かえってすがすがしい感じさえ受けました(p.34)。と同時に大蔵大臣を父親に持ち、楽々と国会議員となれるような二世議員とは違って、こうしたある程度の「割り切り」がなければ、国会議員などにはなれないんだな、とも改めて思いました。

 自身が衆議院議員候補の公募に応募した経験から比較したイギリスの公募制との違いから、「現職優先ルールの見直し」と「選挙区の入れ替え」が日本でも課題になっていく、というあたりも実感がこもっています(p.52)。具体的には予備選などを導入することで、現職議員でも熱心でない候補を入れ替えていくとともに、善戦した新人を、次の選挙の時には、勝てそうな選挙区に鞍替えさせる、という方法。また、妹さんからポスターの表記を「津村けいすけ」にしようとした時に「ふだん自分が書く通りにしなよ」と諭されるというあたりも、悪くかなったかな。

 津村啓介事務所の収入について「政党交付金」が年間1000万円、「パーティ収入」が400~1000万円、「津村啓介本人からの個人献金」が800万円、「支持者からの個人献金など」が100万円という赤裸々な台所事情を明らかにしているのもいいかな。それにしても、個人献金などが100万円というのは少なすぎますよね。ある民主党の大臣経験者の一人一口1万円の献金コースに10口入ったら、秘書が飛んできて有りがたかった、というのを聞いたことありますが、日本には個人献金の文化が根付きませんね。政治に文句ばっかり言うような人には「そんなに文句言うんだったら、一万円でも献金してから言ったら」と思うことがありますが、津村啓介さんぐらいでも年間100万円に満たないんではな…と。

 また、前原代表の時の民主党執行部と安倍晋三内閣について《組織内のコミュニケーションが不十分な状態で実力主義を導入すると、自ずと「よく知った人=お友だち」を重用する結果になる》というのは、なかなかの分析だと思います(p.175)。

 また、政権交代後、内閣府政務大臣政務官にもなりますが、官僚側がわざと日程をぶつけて政務三役が会議に出席できないようにする、というようなことも行われていたフシもあったようです(p.225)。民主党所属の国会議員約400人のうち、政務三役に就いている80人を除いて政策立案に参加できなくなったということもあり、改めて政調が重視されるようになってきていますが、これは政務三役の大幅増員でしか解決できないんじゃないかと思います(p.237)。

 ただ、不満なのは軽い感じで「職業としての政治」を語っていること。副題にも使われていますが、ウェーバーが『職業としての政治』の元になった講演を行ったのは、第一次大戦でドイツが敗北してパリ講和会議が開かれる1919年1月であり、戦争に敗れた若者に二度と間違いを起こさないように将来を託すという想いがあったということを、教養学部の推薦図書からチラッと引用しました、という感じではなく、語ってもらいたかったかな、と思いました。

 ちなみに「週間東洋経済」2011年夏ベスト経済・政治書はこれです。

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