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July 08, 2011

『イスラム飲酒紀行』

Islam_drink

『イスラム飲酒紀行』高野英行、扶桑社

 世界にはまだ秘境というのがあるんだな、と高野英行さんの本を読むと感じさせられますが、この本は、どちらかというとライトな感じ。タイトル通り、飲酒が禁じられているハズのイスラム諸国の裏通りを歩いてみれば、みなさん盛大にやっている、という話。

 この手の話は、『イラン人の心』岡田恵美子、NHKブックスなんかでも読んで知ってはいましたが、岡田さんの本の場合は、ドブロクみたいに各家庭ではワインの密造酒をつくっているみたいな感じの話で、現地の人とお酒を飲んで大盛り上がりするということはありませんでした。だから、SPA!なんかの連載をまとめた高野さんのこの本は、本邦初の現地ムスリムと一緒に酔っ払いまくった記録となります。

 しかも、この本は今後、多くの日本人、特にサッカーファンには、とても重大な意味を持つ本になると思います。といいますのも、出来るかどうか本当はわからないけど、カタールでワールドカップが開かれますでしょ?サッカー観戦とアルコール摂取は切っても切れない人たちが多い中、どうやって、現地調達するのか、そういったノウハウも詰まっているんです。

 とはいっても、決してタブーを破りたいだけではなく、酒が飲みたいだけというのが高野さんの姿勢。しょっぱなのカタール空港であまりにもヒマで、しかもクーラー効き過ぎで寒かったので、ロビーでワインを飲み始めたというんですな。で、新発見があったというんですよ。もちろんワイングラスなんてものがあるわけはないので、ラッパ飲みするわけですが、グラスでワインを空気に触れさせるために回す要領で、顔を上に向けて開けた口を振っていたら、ワインが気管に入って、半分ぐらい吹いてしまったそうです。

 とまあ、こういったバカ話にも、どことなく愛情が感じられるのは、イスラムに対する高野さんの考え方が、わかりやすく説明されているから。高野さん曰く、イスラムというのは「公共」という概念を非常に大切にして、いったん家を出ると、男たちはどんな場合にも女性に気を使わなければならないんだそうです。女性だけでは買い物ができないので、男がついていって、服のサイズやら色の具合から値段交渉まで全部、男がやらなければならない、と。だから、女性たちと分かれると、気さくに男子校のノリで行儀悪くなるそうです。だから

 イスラムにおける酒とは、日本における「未成年の飲酒」に極めて近い。

 というのは、なるほどな、と思いました(以上、「ドーハの悲劇・飲酒篇 序章にかえて」から)。

 ジャスミン革命が始まったチュニジアは旧フランス植民地の優等生というだけあって、ブーハというスピリッツが有名で、今やドイツで大人気になって地元では品薄とのこと(p.78)。

 また、イスラム神秘主義のスーフィズムは酒やコーヒーを飲んでハイになって神に近づくというスタイルなので、イランなんかでも飲酒は大目に見られているとのこと。スーフィズムの修行僧というか乞食坊主のことをダルヴィーシュというらしいのですが、ニッポンハムのダルヴィッシュ有投手のおじいさんが、そういった修行僧だったかもしれない、とのことです(p.112)。

 イランに関していえば、ホメイニ師の意外な一面も知りました。イスラムではウロコのない魚は食べられないのですが(ユダヤ教も)、チョウザメをこれまで通り喰いたい!という人々の要望に応えて「尻尾の近くに少しだけ鱗がある」というファトワ(宗教的見解)を出して、公に食べることができるようにした、とのこと(p.133)。

 また、大物に関していえば、ケマル・アタチュルクは肝硬変で死ぬほど、朝から酒を飲み続けていた、というのも知りませんでしたね(p.216)。

 シリア南部のドゥルーズ派がつくる地ワインというのも飲みたいな、と思いました(p.224)。

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