『原発社会からの離脱』
『原発社会からの離脱 自然エネルギーと共同体自治に向けて』宮台真司、飯田哲也、講談社現代新書
吉本さんが「正真正銘の馬鹿」と逆説的に評価した宮台真司さんの本は、本屋さんでパラパラとめくって「くだらない」と思ったもの以外は読むようにしています。
福島第一原発の事故の後、専門でもない原発問題に噛みつくというのは、吉本さんが書いたような、いかにも「正真正銘の馬鹿」である姿を見させてもらった感じです。よく言えば眼高手低だけど、よき編集者にも対談相手にも恵まれていないために、かなり恥ずかしい間違いを犯してもいます。でも、吉本さんの言い方も可愛いと思っている部分もあって、それ的に許してしまう部分もあるかな、というか《まちがった思想でも、大胆にそして明晰に表現されているのなら、それだけでじゅうぶんな収穫といえる》(『反哲学的断章』ウィトゲンシュタイン、青土社、p.198)と思っているので、読了しました。
でも、最初に言いたいのは、ダメさ加減。対談相手の飯田哲也さんというのは知らないんですが、民主党の中の旧民社党系の議員たちが経済産業部会やエネルギー部会を支配し、《だから経済産業大臣は直嶋正行さんであり、その後も大畠章宏さんと、旧民社党です》(p.112)というのはヒドイ。
大畠さんは90年2月の衆議院議員選挙で社会党から立候補して当選したんですが…。
その後も《電力総連、電機連合に依存している民主党は、旧民社党系、つまり同盟系から経産大臣を出しています》(p.145)と書いていますが、電機連合は社会党支持が多かった中立労連加盟だったんですよね。だから日立労組出身の大畠現国交大臣は社会党から立候補しているんですし、ちょっと、つまらない間違ったインフォメーションで、大きな問題を語るような気配があるんじゃないかと、全体の言説への信頼性も失わせているんですよね…。
途中で『世界リスク社会論』ウルリッヒ・ベックから影響を受けたと書いているんですが(p.92)、ちくま学芸文庫への前文として寄せている、《失われた安全のために自由という代価を支払おうとする機運が高まっている》という文章を読んでいるんでしょうか?。原発で失われた安全を声高に叫ぶためには、(間違いでも強調するという)代価を支払おうとしているんじゃないかと思ったりして。
この方の経験もスウェーデンとかメガインフラを必要としないような経験ばかり語っていて、それはそれで素晴らしいけど、資源を持たない1億2000万人が住む日本で可能とはとても思いません。
批判ばかりですが、もう少し反原発の方たちはちゃんと頑張らなければならないんじゃないかな、と思いました。
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Comments
原発の件になると頭に血がのぼって 論理破綻しまくるね。 ごたくならべてないで 放射能止めて来い。 自然エネルギーへのシフトは心配しないで宜しい、可能だ。
Posted by: w | July 21, 2011 12:26 PM
まあ、基本的な間違いをなくさないと「自然エネルギーへのシフト」なんて軽い一言ですませる内容自体が疑われる、ということです。
細かな間違いを指摘されるだけで、逆上するようでは「脱原発派は宗教と同じ」と見られるかもしれませんよw
まさに論理の破綻w
Posted by: pata | July 21, 2011 12:47 PM