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June 08, 2011

『フットボールサミット 3.11以降のJリーグを問う』

Footballsummit3

『フットボールサミット 3.11以降のJリーグを問う』カンゼン

 東日本大震災の関係で、ボランティアに関わらせてもらったというか、少しでも参加させていただいた中で印象的だったのは「サッカーを愛する人にできること Football saves Japan」の活動でした。

 様々なクラブのサポーターが集まって、ベガルタ仙台に対して緊急物資輸送を行い、その後もヘドロの除去などの活動を継続的に行ったというものです。

 その報告が『フットボールサミット』の中で清義明さんによって行われていました。

 一読、まっさきに思い出したのは『非営利組織の経営』P.F.ドラッカー、ダイヤモンド社、1991でした。

 Football saves Japanの活動をマスコミが取り上げているなかで、アホな学者が「サッカーのサポーターは、国家と出会ったために、こうした活動を展開しはじめた」とか笑っちゃうようなコメントを寄せていましたが、そんなんじゃないと思いました。

 ぼくが、ひとこと、こうした活動に感じた言葉は「直接民主主義」です。

 尊敬するドラッカーが80代で書いた『非営利組織の経営―原理と実践』では、参加型民主主義が唯一可能な分野として先進諸国で残っているのはNPOだけだ、と書き、しかし、そこにも効率的なマネジメントが必要だと説いていました。

 ドラッカーがこうした本を書いた背景は、ボランティア団体などの非営利組織がアメリカにおいて最大の「雇用者」となっており、そのセクターにおいて人々が自己充足と成果を求め、それを見出す社会的領域になっているからでした。

 「アメリカ人のほとんどにとって、非営利機関は、いまだに政府や企業よりも、ずっと大事で、ずっと意味のある、身近な存在」なのです。そして、そうした組織に参加するということは「たんに受け身で投票したり、税金を払うということではなく、能動的に人々が活動する昔のような市民社会をつくり上げる」ことにもつながります。こうしたことは、そのままJリーグのサポーターにもあてはまりそうです。

 「支援活動から思索するサポーター像」の中で、初めて得た知見は、こうした組織がちゃんと財政的な基盤を持っている、ということでした。清さんによると、それはアパレルの販売によってもたらされているそうですが、こうしたことを聞いたのは、勉強不足なのでしょうが、初めてでした。

 もちろん、市民社会で大きな役割を持っている存在であるならば、単に「良き意図」を持つだけでなく、その使命を明確にし、成果の出るマネジメントを行わなければならない、というのがドラッカーの問題意識でした。1600年前、アウグスティヌスは砂漠のいたるところに教会を立てようとした聖職者に「空っぽの教会では神もお喜びにならない」と書き送ったそうですが、成果を得るためには市場の調査、セグメンテーション(区分すること)、サービス対象の絞り込み、自らの位置付け(ポジショニング)の明確化、ニーズに応じたサービスの創造という当たり前のマーケティング戦略が必要になってくると思います。

 ぼくが唯一気に掛かったのは、今回の大震災の復興ボランティアという性格上、致し方ないのかもしれませんが、清義明さんが「支援活動から施策するサポーター増」の中で描いているサポーター像が、やはりマッチョ方向に触れていることかな、と思いました(もちろん、3月、4月の場面で、それは必要なことだったとは思います)。

 ドラッカーは『非営利組織の経営』の中で、何人もの人々にインタビューしているのですが、その一人にレオ・バーテル神父がいます。神父とのインタビューで印象に残っているところをあげてみます。2000人のボランティアが司教区のために働いていて、その大半が女性だ、というところです。

ドラッカー それは新しいことですか。カトリック教会は、つねに多数の女性ボランティアを擁してきたと思いますが。
バーテル もちろん、そうでした。しかし、昔のボランティアは「補助者」だったのです。いまの私たちのボランティアは「同僚」です。実際のところ、いまでは、「ボランティア」ともいうべきではないかもしれません。実質は「無給のスタッフ」だからです。
ドラッカー 40年前はイースターのためにユリの花を活けていた女性たちが、いまや、人々に教えたり、就学前の子供たちの世話をしたり、病院の受付部門を運営したり、教会の評議委員を切りもりしているというわけですね。
バーテル まったくそうです。これは、本当の意味での変革だと思います。(p203-204)

 無給のスタッフによる、社会の本質的な変革。それが『非営利組織の経営』でドラッカーが描きたかったことだと思いますし、日本の社会では、もしかしてサッカーのサポーターがやりはじめていることなのかもしれません。

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