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May 05, 2011

『中国旅行ノート』ロラン・バルト

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『中国旅行ノート』ロラン・バルト、桑田光平(訳) ちくま学芸文庫

 1974年といますから、文革(66~76)の後期、林彪のクーデーター未遂と墜落死の後に、人民解放軍の再掌握などを狙った林彪批判運動を正当化するために、孔子と儒教もセットすることで、その批判に重みを増そうとした(そのために、よりわかりにくくなったw)批林批孔運動の真っ最中に、ロラン・バルトは前衛誌『テル・ケル』のメンバーともに中国を三週間訪れた際に残されたんですが、そのノートを元に最近、発行されたのが『中国旅行ノート』。

 ロラン・バルトとしては中国版『記号の国』のメモのつもりだったんでしょうが、結局、それは書かれず、ノートのまま2009年に発表され、日本語訳も今年3月に出たばっかりなので、旅行のお供になってもらいました。

 にしても、批林批孔運動っていうのは、当時もまったく意味わからなかったんですが、クリステヴァなども含む『テル・ケル』のメンバーに対する説明も、バルトいうところの「ブロック」(紋切り型の言説)ばっかり。

 しかし、最後に、ようやくわかったのは、プロレタリア独裁の手法に対する議論だったんですね。まあ、最初から毛沢東が答えを出してしまっていて、その答えに収斂させていくような議論だったんでしょうが、批林批孔のために読むことが奨励されていたのがマルクスの『ゴータ綱領批判』だった、というあたりから謎解きが始まります。『ゴータ綱領批判』はプロレタリア独裁のあり方や国際主義に関する文書なんですが、バルトの一言はなかなかカッコ良いんですよ(p.71)。

 『ゴータ綱領批判』への回帰は興味深い、なぜ、マルクス主義おいて唯一ユートピア的展望を含んだテクストへ 批林批孔運動のなかで 明らかに計画的に回帰するのだろうか?

 全体が、ようやくわかったのが北京大学での討論(p.226-)。かなり、意訳しますが、林彪はエリート主義で文革をやろうとした、と。孔子も、同じようにエリート主義で奴隷制社会を改善しようとした、と。しかし、中国の目指す文化大革命は大衆のものであり(まあ、事実上は毛沢東の主導するものであるにせよ)、作風が違う、という意味だったんだな、と。

 いやー、大して気にもかけていなかった問題ですが、問題の設定の意味自体がわからなかったので、今回、旅行中にわかってよかったですw

 まあ、こんなことより、中国旅行中には性欲がわかないとか、頭痛に悩まされるとかこぼすバルトの姿や、数少ない中国を訪れている西洋人に対して《事業家か教養の無い旅行者。彼は朝食の際にとりわけ傲慢な態度をとる》と書いているあたりは面白かったです(P.204)。

 ということで、日本に戻りますw

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