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March 20, 2011

『エスコフィエ自伝』

Escoffier_2

『エスコフィエ自伝』オーギュスト・エスコフィエ (著)、大木吉甫 (訳) 、中公文庫

 サブタイトルが「フランス料理の完成者」とあるように、プティ・ムーラン・ルージュの料理長からサヴォイ、リッツ、カールトンのレストラン部門を担当することになったオーギュスト・エスコフィエ(Georges Auguste Escoffier、1846年10月28日-1935年2月12日)の自伝。

 その間、英国王エドワード七世などとも親しくなるわけですが、鍛冶屋の息子として生まれ、聖体拝領を受けたばかりの13歳の時に叔父から言われて料理人の世界に入るという庶民派。

 こうした庶民性からでしょうか、サヴォイ、リッツ、カールトンで活躍したロンドンでは貧民救済事業に力を入れたり、料理人の社会的地位の向上や福祉にも熱心に取組みます。偉いもんですな。

 1903年には「料理の手引き」(Le Guide Culinaire)を発表したりして、料理界の王者として君臨するんですが、しかし、一番、印象的なのは普仏戦争時に士官担当の料理人として徴兵されたときのエピソードでした。

 食材や時間が少ないなか、なんとか工夫して満足させる料理を提供しようという姿勢には、どんな時にも与えられた環境の中で最高の結果を目指すのがプロなんだな、と改めて思わされます。アマチュアは、ある一定の条件が整わなければ結果を出せない場合が多いのですが、プロはなんとかアウトプットするんだな、と。

 それしてもフランスっていうのは、国防大臣みずからがパリ司厨士協会に対して料理人の提供を求めるんですねぇ(p.45)。戦時状態なのにwいやー、驚きました。

 それにフランスの兵隊さんときたら、前線のすぐ近くなのに、ヒマだと兎狩りに興じたりして、まあ、プロシアには負けるわな、とw。

 しかし、驚くのは士官に供されるメニューです。

オイルサーディン、ソーセージ
殻つき半熟卵
ミディアムに焼いたローストビーフ
じゃがいものサラダ
コーヒー、上質のブランデー

 これがある日の戦場での朝食ですよ!

 さらに激戦となったグラヴロットでも、こんなのが夕食のメニューです。

鮪、サーディン、ソーセージ
玉葱のスープ
兎のソテ
ラードで揚げたじゃがいも
チーズ、コーヒー

 兎のソテとは何か。こんな料理です(p.53)。

 まず兎を切り分け、ラードを使ってフライパンで炒め、みじん切りにした大きめの玉葱六個を加え、塩、胡椒する。そこにコニャック一カップと白ワイン一カップを注ぎ込む。
 こうした二〇分後、玉葱がピュレ状になり、これが主要な味つけのもとになることから《スービーズ風》といっても充分に通る。

 というようなメインを戦場でつくってしまうんです。もちろん敏感な舌を持っている士官たちも大満足だったそうですが、今でも「んまそう!」と思わせます。

 と同時にですね。やっぱ、人間はんまいもんを喰っていかなければならないと思うんですよ。東北地区を中心に、そうした状況に少しでも早く戻ることができればいいな、と思います。

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