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January 16, 2011

『がん 生と死の謎に挑む』#2

『がん 生と死の謎に挑む』立花隆、NHKスペシャル取材班、文藝春秋

 NHKスペシャルは地上波で放送したものと、BSで放送した三部作があるそうで、NHKアーカイブスに収録されたら、この三部作はぜひとも、見てみたいものだ、と思っています。

 いま、ネットワークTVはApple TVとacTVilaのふたつを導入していますが、圧倒的に利用頻度が高いのはNHKアーカイブス。映画が90-120分なのに対し、NHKスペシャルは60-90分ですから、見る負担も少ないですし、得られるものも大きいですからね。

 ということですが、この本によってBS版の「人類はがんを克服できるのか」2で、転移の謎を紹介している場面が出てきます。臓器にできるがんの8割は上皮細胞にできる上皮がん(carsinoma, カルシノーマ)ですが、がん化するときには、一挙にがん細胞になるのではなく、上皮間葉転換という過程を経るそうです。そして、これによって細胞移動がはじまり、がんは移動能力を獲得するのですが、これは生命進化史上のでく古い段階で起きた画期的なできごとだとのこと(p.109)。

 なんか、タメ息がでそうなところですよね。がんは生物の進化に組み込まれているというか…。

 そして、がんのどこに原発巣があるのかというのは、なかなかわからず、転移したがんがずつと悪化しやすく、それが死因になることが多いとのこと(p.112)。これなんかも、知人の例で経験した通りの話ですね。原発巣を探しているうちに、素早く進行してしまったという…。さらにダメ出しのような話ですが、抗がん剤は子孫は殺せるが、幹細胞は殺せないというんですから、お手上げです(p.163)。

 また、がんはゆっくり進行し、最初の検査にひっかるまで10~15年かかり、そこから宿主の生命を奪うまでにも最低5年はかかるそうです(p.116)。ここなんかは、逆にホッとするところですね。だから、気が狂ったように検査してもかえって身体を悪くしそうですし、免疫力を低下させないようにすることが、最大の予防策なんじゃないかと思いました。

 とにかく、がんというのは直径1センチ、重さ1グラムにならないと発見されないそうで、それまでは無症候性だそうです(p.287)。

 よく、人生は死ぬまでのヒマつぶしなんて書くヒトもいますが、日本人の1/3ががんで死ぬことを考えると、「人生はがん細胞が直径1センチ、重さ1グラムになるまでのヒマつぶし」といえるかもしれませんね。

 本では最後の方に付け足しのように書かれている、手術の際に筆者が学んだ、身体の構造や仕組みに関する、驚くべき話も良かったですね。

 ひとつは脊髄麻酔の話。

 《人間の肉体は、分節構造になっている。いわば輪切りの肉体を積み重ねるようにして全体ができているのである。一つ一つの輪切りの世界は、脊髄の輪切り該当部分から横に出て行く末梢神経によって支配されている。その神経の入り口を狙って麻酔をかけると、局所麻酔はその分節ごとに「ここから上」とか「ここから下」などというように厳密に部位をコントロールしてかけることができる》んだそうです(p.248)。うーん、知らなかった。身体って凄い。

 腎臓の話も凄かった。

 腎臓は1日100リットルを濾過するそうです。なんで、こんなに濾過できるのかというと、対外に出て行く現実の量が1-1.5リットルなのに対し、99リットルの原尿はは再吸収されて再利用させるからで《人体は水に関しては最高のリサイクルマシーン》なのだそうです(p.281)。

 さらに、タンパク質は三種のフィルターによって絶対に尿の中に出ていかないになっており、逆にタンパクが出て行っていまうタンパク尿は重篤な症状を引き起こすとのこと(p.283)。これなんかすごく納得的。

 また、細胞の数が必要以上に多くなると、アポトーシスという生物学的集団死現象によって死ぬんだそうです、最初期のがんも、大部分はアポトーシスによって死に、身体のホメオスタシスが維持される、と(p.285)。そして、細胞一定のホメオスタシスをこわしてしまうのが、がんなのである、という事実上の結びも分かりやすかったです(p.286)。

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