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December 24, 2010

若い玉手の『合邦辻』

Gappotsuji

 菊之助が玉手御前を演る『摂州合邦辻』。しかも通し狂言。

 ワクワクするような組み合わせです。

 スジは俊徳丸伝説を換骨奪胎し、義理とはいいながら後妻に入った高安家の息子に恋い焦がれる若い母親の物語に仕立て直すという、石原慎太郎あたりが町奉行だったら作者の手鎖は免れないような話。

 この芝居は、最後の段の「合邦庵室」しか演じられないことが多く、通しは初めての見物。

 いつもは、自分の息子への恋いに狂った玉手御前が花道から登場するあたりからドラマが盛り上がって…ということになります。

 花道から出る玉手御前は、歌右衛門の型では、黒の着付けの片袖をちぎって被り、顔を隠そうとしているという風情。しかし、引きちぎった二枚重ねの下は燃えるような赤というんですから、いやー、昔の人はヤバイこと考えてましたねぇ。歌舞伎って本当に素晴らしい。

 でも、歌右衛門さんや梅幸さんは、隠密のようにあごまで隠すように片袖を被っていたんですけど、菊之助さんはふわりと被って、しかも、裏地の赤が首の両側から見えるように型を少し変えたんでしょうか。

 オードリー・ヘップバーンが一番美しかったのは尼僧ガブリエルに扮した『尼僧物語』だと思うんですが、確か歌右衛門さんが「顔を隠すと綺麗になるから尼僧役の女優さんはみんないいわよね」と語っていたと思います。

 菊之助さんが次に玉手を演るときには、ぜひ、あごまで隠すスタイルでやってほしいかな、と。

 そして、通しでやってくれたから、前の段で、羽曳野(高安家の家臣の妻)を振り切って俊徳丸を追いかけるという立ち回りがあったから、片袖も取れそうになったんだ、ということが分かりました。いやー、通しってスゴイ(単に勉強不足ですが…)。

 あと、今回はお歯黒していたのかな…。歌右衛門さんの晩年だと、笑うとお歯黒が不気味だったのが良かったんですけどね。

 「玉手はすっくと立ち上がり」という浄瑠璃からの立ち回りは、梅幸さんのように、父に刺されてから、実は継母としての義理を通すためとくどくために白くなるという解釈をとってましたね。

 歌右衛門さんは、立ち回りになったとたんに白くなっていました。

 ここは、歌右衛門さんの方がモダンな解釈じゃないですかね。父親に不義をとがめられて、実は理由があったということで白くなるんじゃなくって、最初から白いんだよ、みたいな。

 しかし、久々の若い玉手。

 浄瑠璃でも玉手は後妻ですから若かったんですよね。

 若い、しかも、素晴らしい玉手を見ることができて幸せでした。

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