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December 02, 2010

『和解する脳』

Ikegaya_wakai_nou

『和解する脳』池谷裕二、鈴木仁志、講談社

 もしからした人間がサルと違うのは、人間には他者と和解する能力が備わっているんじゃないか、みたいな話を、池谷"海馬"裕二さんと弁護士・鈴木仁志が語りまくる、という本。「面白くてタメになる」を目指す講談社だけあって、池谷さんに相当、入れ込んでますね。実際、最初は「池谷さんの本にしては、スリリングじゃないな」と思っていたんですが、後半、盛り返してきましたもん。もちろん、脳研究の素晴らしさが前提だと思いますが、編集の頑張りが少し感じらました。

 ということですが、以下は断片的に。

 「タロウ君は、ジロウ君がハナコちゃんがお人形遊びをするのを邪魔したことをいけないと叱った」という文章は「A(A'(A'B')B')B」という入れ子構造=再帰になっているということを説明しつつ、簡単な言語を持つ動物と違って再帰が出来るのは人間だけだ、とした上で(p.32)

1)他人の視点からモノが眺められるというが再帰であり(p.33)
2)1+1=2.2+1=3,3+1=4…と数字が連続したものだとわかるのも再帰ができる言語構造を持っているからであり
3)それが、やがて無限になるというという概念を獲得し
4)逆に無限でないものが「有限」であるというということが分かったのが人間だ

としています。

 犬や猫は自分の命が有限だとは分かっていないので、無邪気であり、その健気さに人は癒されるということもわかるし(p.36)、資源が有限だということを認識したところから争いは始まる、と。

 この話の中では、かくれんぼという遊びができるのは再帰ができるようになる4歳ぐらいからで(それ以前の年齢では、自分が目をつぶると世界がなくなる)、それは他者視点でモノをみることができるからなんじゃないか、というあたりもよかったな(p.39-)。

 池谷さんの専門分野で研究が進んでいるな、と感じたのはPAG(中脳水道周囲灰白質)。池谷さんは攻撃的な脳は扁桃体ではなく、PAGにあるのではないかと考えており、切羽詰まるとPAGが活動して相手を攻撃するんじゃないか、というあたりは初めて読みました(p.58-)。ただし、扁桃体が慢性的に活動できるのに対し、PAGは火事場の馬鹿力のように一過性であるのと同時に、中脳にあるという本能的な部分なので、テンパると抑えがきかない、といいます。

 そしてPAGが発火している状態では、喧嘩の相手方のこととか考えられないようになるから、紛争がエスカレートする、と(p.135)。

 《もともと紛争というのは、近くにいる人との間で起こる》(p.155)というあたりは、近隣諸国に対する敵意をむき出しにするナショナリズムの愚かさと危うさを説明してくれていると思います(嫌なんとかということを恥ずかしくもなく言えるのはサル度の高さ以外のなにものでもないかな、とw)。

 対談相手の法律関係で面白かったというのは、日本の裁判では、偽証が横行している、というあたりですかね(p.84)。これは実によくわかるし、納得もできます。日本人は法律なんてあまり信じてませんもん。

《裁判制度というのは、人間である裁判官の脳に情報を入力して。法的に正しい出力を得ようとするシステム》(p.86)という表現は気に入りました。

 これに関して、OFC(眼窩前頭皮質)の機能が不全な患者は虚言癖を持つというあたりも面白かった(p.98)。

 民事裁判というのは、必ずしも本当の意味での真実を厳密に追求するものではない、というあたりは、ヘーゲルの『法哲学講義』の《法(正義)は実際はまず見せかけの法(正義)にすぎず、潜在的な法(正義)です》《見せかけであることが法(正義)の当然のすがたなのです》というあたりを思い出しました。

 OFCというのは快、不快しか判断せず、人間も好きか嫌いかでしか、判断していないというのは、すごくわかります(p.161)。

 まだ続けたいと思いますが、それはのちほど…。

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