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December 19, 2010

『腐った翼 JAL消滅への60年』

Lotten_wing_jal

『腐った翼 JAL消滅への60年』森功、幻冬舎

 過日、ボッーとしながらBlu-rayで撮れていた番組の確認をしていたら『沈まぬ太陽』がWOWOWでやっていたのがHDにあったので、見てしまいました。

 山崎・盗作・豊子さんの原作はとても読む気はしなかったし、映画自体もあまりに勧善懲悪すぎていて「ちょっとなぁ」と思ったのですが、改めて「なんでJALには、こんなに考古学的なのも含めてオールド左翼が多かったんだろう」という興味がわき、今年出版されて話題となっていたこの本を読むことにしました。

 『沈まぬ太陽』の主人公のモデルとなった小倉寛太郎さんは、東大細胞時代からの共産党エリートでしたし、御巣鷹山事故当時の社長である高木養根さんは、滝川事件にも関わっていました。

 高木養根さんは滝川事件で京大を退学後、東大法学部に入り直して、1940年に日本航空の前身「大日本航空」に入社するんですが、ここらあたりが詳しく書かれているのがこの本の良いところ。

 軍事技術であった飛行機を日本で民間に取り入れたのは、1928年の「日本航空輸送」。もっぱら、中国の租界と日本を結んでいたそうです。そして関東軍は1931年にナショナル・フラッグ・キャリアとして「満州航空」を設立、傘下の国際航空はベルリン路線を就航させます。38年には国際航空と日本航空が合併、ただいま放映中のNHK大河で大活躍中の児玉源太郎大将の息子である児玉常雄が総裁に就任した「大日本航空」がスタート。そこに高木養根さんは入社するわけですが、敗戦後、GHQによって大日本航空が所有していた機体は全て破壊されたそうです。大陸浪人と、新官僚がつくったような国策航空会社が復活するのは、日本の戦後史のご多分に漏れず朝鮮戦争だった、という24頁以降の歴史は簡単にまとめてあるけど、面白かったですね。

 そして《もともと航空業は軍事利用からはじまっているせいもあり、やたらと規制が多い》(p.27)というあたりにつながっていきます。岸信介に代表されるような国家社会主義的な新官僚と大陸浪人的な会社には、高木養根さんのような転向派や、小倉寛太郎さんのようなスターリンばりばり時代の共産党員というのは相性がよかったのかな、と思いました。

 まあ、後は、官僚や自民党とべったりの関係で、持ちつ持たれつの関係で放漫経営を続けたわけですが、御巣鷹山事故の当時は、旧清和会が一手に握ってた日航利権を、田中角栄が倒れて自由を得た中曽根派が、民営化路線を推し進める中で奪おうとして、高木養根社長などの非運輸官僚の"生え抜き派"が勢いづいていた、というあたりも、背景としては抑えておいた方がいいのかな、と思いました。高木養根と青年将校・中曽根康弘というのは、これまたピッタリしすぎるぐらい相性が良さそうです。

 高木社長は82年2月の逆噴射・羽田沖事故をなんとか乗り越えますが、85年8月に中曽根首相肝いりの民営化を発表したその日に御巣鷹山事故を起こしてしまいます。

 そして鳴り物入りで乗り込んできたカネボウ・伊藤淳会長二は、年収3000万円を超えるパイロットにも団体交渉権を認めるなど、高コスト体質を残し、為替予約の失敗による2000億円もの簿外債務を暴いたのはいいけど、その処理を行う前にクビを切られます。古巣に戻った伊藤会長は03年まで終身名誉会長を続けますが、05年にカネボウは倒産するというオマケ付き。もうちょっとマシな経営者いないの?みたいな感じです。

 この簿外債務は、同時期に買ったB747の代金に上乗せされ、やがて倒産の引き金になります。不良資産があまりにも多いために、中古のジャンボを売却しようにも、そのとたんに債務超過になってしまうため、燃費の悪い古い機種を使わざるを得なかった、というのがその理由(p.236-)。いやー、膿っつうのは、一気に潰して出さないとアカンですわね。

 その後、官僚出身の山地社長の後を継いだ、生え抜きのホープ、利光松男社長は高コスト体質、簿外債務を放っておいて、リゾート開発などにのめり込んで、さらに傷口を広げ、04年には自殺で人生の幕を閉じます。

 自民党とのもたれ合いでは、航空券のほか、採用が大きかったといいます。つまり、コネでJALのスチュワーデスにさせたりする、と。それも福田派だけでなく、田中派、中曽根派、はたまた宏池会にまで及び、政治家秘書なども目をつけた女子大生に「JALに入れてやるから」と手をつけるのまでいたというのですから、素晴らしすぎます(p.87)。

 もちろん、自民党本部の総合政策研究所にも社員を派遣し、共産党の追求でいったんは外れますが、また強引に入会したりと、どこまでズフズブなのかな、と(p.89)。

 兼子社長・会長と、その傀儡であった新町社長の時代に頻発したクーデーターまがいの騒ぎはよく知られていますが、いずれも、腰が入っていないというか、自分が先頭に立って改革するんだ、というより、リストラの対象にされるから破れかぶれで…という感じを受けるのが情けないところですね。

 その後、毎年のように発表される経営再建計画は、国鉄末期の状況を想い起こさせます(まあ、どっちもどっちですが、個人的には旧国鉄関係者の方が経営者も労組の人もマシな感じを受けます)。

 羽根田JAL Inter社長らの挑戦は退けたものの、西松社長は航空機燃料の先物ヘッジで600億円の差損を出すなど、さらに経営を悪化させ(p.229)、ついに民主党政権となってから倒産に至ります。ここらへんは自民党が借金まみれにした日本を再建中の民主党の大変さがダブリます。

 しかし、その後も信じられないマイル商法などのダンピング商売を続けるのですから、更生計画は認可されたものの、どうなっていくんですかね…。

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