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December 08, 2010

『昭和45年11月25日 三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃』

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『昭和45年11月25日 三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃』中川右介、幻冬舎新書

 幻冬舎新書から出した『十一代目團十郎と六代目歌右衛門』、『坂東玉三郎 歌舞伎座立女形への道』に続き、新聞や雑誌報道、書籍から抜書きした情報から近現代の歴史や事件を浮かび上がらせるという手法の本。今回、浮かび上がらせる"あの日"の情景は、40年前の三島由紀夫による陸自・市ヶ谷駐屯地での事件。

 一九七〇年=昭和四十五年は、昭和のオールスターが揃っていた年だ。
 昭和天皇はまだまだ元気だったし、内閣総理大臣は最長在任記録を持つ佐藤栄作、自民党幹事長は田中角栄、防衛庁長官は中曽根康弘、警察庁長官は後藤田正晴だった。最強の布陣ではないか。

 という「はじめに」は印象的(ちなみに、この日、熱海・後楽園ホールでV6を達成祝賀会を開いた読売巨人軍には、もちろん長嶋茂雄と王貞治がいて、打撃三部門のタイトルは二人で独占していた)。

 「そうだったかな…」と思うのは、この日がとても寒い日だったという記述。

 ぼくは小学生で『潮騒』あたりは読んでいましたが、とりたてて好きな作家ではありませんでしたし、その後も、好んで読むことはありませんでした。中川右介さんの実父である編集者の藤岡啓介さんの言葉を借りれば《『金閣寺』やらなにやら、事件や人物をモデルにしなければ駄目なのか、と小馬鹿にしていた。慎太郎もそうだったけど、やたら画数の多い漢字を使っていて、キザだな、と眺めていた》(p.161)という感じでしょうか。事件直後、家にあった『仮面の告白』や『金閣寺』を読みましたが、ピンと来なかったな…。

 戯曲を除けば三島由紀夫の文学には、それほど興味はなく、起こした事件にも全く共感できないのですが、この本からは、多くの証言によって三島由紀夫が浮かび上がってくるというよりは、右肩上がりの絶好調ニッポンの時代が見えたような気がします。

 ちなみに、あとがきで、この本はサド侯爵以外の六人の女性が彼について語ることで人物を浮かびあがらせるという三島の『サド侯爵夫人』の手法で書いたとしていますが、単に証言を集めたという以上のものは感じられなかったかな。

 一番、印象的だったのは寺山修司の以下の言葉でしょうか(p.242)

 「三島は季節を間違えたな。桜の季節にやるべきだった」

 以下は閑話休題。

 歌舞伎好きの著者だけあって、歌右衛門と玉三郎の言葉は大切に引用されています。そして三島が、フィジカルにも愛した歌右衛門論の冒頭に《一つの時代は、時代を代表する俳優を持つべきである》と書いているのを引きながら、1970年を代表する俳優は三島由紀夫だった、としています。そして、歌舞伎が歌右衛門、玉三郎、海老蔵とそれぞれの時代を代表する役者を得ているのとは逆に、いまの日本社会は「ひとりの俳優」も持てなくなっている、と書いています(p.282)。

 そして、もし、今の時代に三島と同じような事件を有名作家あるいはアーティストが起こしたとしたら、本やCDは回収され、マーケットから消えてしまうだろう、というあたりは、いまの海老蔵の苦境と重なりました。どんな事件を起こしても、性格に問題があるにせよ。歌舞伎座の花道であれほど輝く俳優を失いたくはありません。

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