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November 16, 2010

『日本の大問題が面白いほど解ける本』

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『日本の大問題が面白いほど解ける本』高橋洋一、光文社新書

 高橋"霞ヶ関埋蔵金"洋一さんは多作です。

 できる男はアウトプットの量でだいたい判断できると思うのですが、それに加えてダブリも少ない。今回の本も政策評価はB/C分析で、マクロ経済は金融政策によるリフレで、制度は道州制でやればたいていの問題は解ける、というまさにサブタイトルの「シンプル・ロジカルに考える」やり方でバッサバッサ切っていきます。

 でも、マイルドなインフレを目指すリフレ(デフレを終わらせるためマイルドなインフレへ移行させるリフレーション)にしても、日銀法改正が必要になってきますし、ましてや道州制など、いつになったらできるかどうかもわかりません。

 冒頭、八ッ場ダムについて、修正された建設費4600億円で6000億円の便益があるのなら、すでに投入された3400億円をサンク・コストにするよりも、残り1200億円をかけて6000億円の便益を得るほうがいい、と説明しています。ここまではいいですわ(ちなみに、現在、基本高水のデータが相当古い計算式を使っていたということで安全という面からも見直しも行われており、再計算の結果やっぱり危険なので再び着工ということになるかもしれません)。

 しかし、本来はこうした大規模ダムは関係する関東の六都県がレベニューボンドで建設資金を調達すべきであり、それなら民主主義と金融の原理が貫かれる、と書いているあたりは夢物語としか思えません。とてもじゃないけど、国相手の起債ならともかくも投資家を納得させるような6000億円もの起債をするようなことを広域連合といいます六都県の担当者ができる能力があるとすれば、その時点で今の日本が抱えているような問題は全て解決済みになっているんじゃないでしょうか。

 だいたい、地方整備局が音頭をとらなければ、建設計画だって進まないんと思いますし。だから、解決策を提示したとはいっても、ほとんど夢物語といいますか、癌の特効薬が開発されれば、癌は克服できる、と言っているようなものかな、とも感じます。

 同じように感じたのは、鳩山政権は衆議院選挙の前に政権移行チームをつくるべきだったとか(仮につくっていたとしても、当時の自民党が横やりを入れてきたと思います)、鳩山政権としてのシーリングを示しておけば、官僚たちは工夫しただろうとか(眉唾そのものw)、日本版FCCをつくって周波数オークションでテレビ局から金を巻き上げろとか(これも、リアルな政権のマスコミ対策としては無理でしょ…)、国民総背番号制が導入されれば、個人所得の捕捉が進むので法人税はゼロに近くなるとか(それでも脱税すると思う)など。

 もちろん、参考にすべきところはいっぱいありますよ。例えば、円高是正は介入より金融政策でとか、中国の害が準備高が増えているのは民間セクターの持つ対外債権を買い上げたうえに為替介入を行っているためとか(p.87)、斉藤次郎日本郵政社長(元大蔵事務次官)は将来の次官候補といわれる稲垣光隆・財務省主計局次長を娘婿に持つとか(p.94)、財務省は財政逼迫を国民に印象づけるために毎年10兆円の国債を借り換えることで名目上増やした印象を見せているとか(p.128-)、寄付が税額控除になれば(所得控除ではなくて、納税額は寄付金を引いたものでOKというのが税額控除)自分の出た大学などに名前付で残る施設や財団を残そうとする人はかなりいるハズで、それをいやがっているのが仕切りたがり屋の文部官僚だとか(p.173-)。

 最後のあたりに書いてある「お金の使い道は、行政サービスを受ける側が決めるべき」というのは素晴らしいクリアカットさだと思いました。

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