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November 19, 2010

『シリーズ中国近現代史3 革命とナショナリズム』#1

Chinese_modern_history

『シリーズ中国近現代史3 革命とナショナリズム』石川禎浩、岩波新書

 『清朝と近代世界』
から刊行が開始されたシリーズ中国近現代史ですが、なんと2巻を飛ばして3巻が出ました。研究対象が大きいと、研究者も大陸的な発想になるんですかね。ちょっと日本史なんかでは考えられないと思うのですが、まあ、バツグンに面白かったから大許しです。

 つか、ぼくが不勉強だけなのかもしれませんが中国の近現代史って知ってそうで知らないことばかり。

 例えば西安事件。

 あまりにも有名な事件ですが、これで国共合作が一気に実現されたかというと、全く違う。

 蒋介石が西安入りしたのは1936年12月4日。

 内戦停止と抗日を呼びかける学生デモが行われる中で張学良は蒋介石を説得しようと「諫言」を試みますが、逆に激しく叱責されるばかり。

 学生デモの鎮圧を要求する蒋介石に対して、張学良が逆にその身柄を拘束したのは12月12日早朝。一致抗日の意向を持つとみられる各地の有力者に呼応を促すとともに、毛沢東に電報を発します。

 中共はモスクワに指示を仰ぎますが、指導部では「除蒋」(蒋の処刑・罷免)といった強硬論がいったん大勢を占めるも、17日に西安入りした周恩来が説得の可能性を伝えると、平和的解決に傾きます。

 一方、張学良が期待した西安事変に呼応する動きは起こりません。

 そうした中、挙国抗日体制の確立に前向きの宋子文(宋美齢らの兄弟)も西安~南京を往復しながら、説得を続け23~25日にかけて、周恩来が中共の紅軍が蒋の指揮下に入ることなどを認めるとともに、蒋介石も容共抗日を約束する、ということになります。

 かくして25日、蒋介石、宋美齢、宋子文、張学良らは飛行機に乗り、26日には南京に戻ります。

 しかし、中共側が一致抗日など蒋介石との合意事項を無神経にも勝手に発表したため、怒った蒋介石は張学良を逮捕。張学良はこの後、半世紀の間、幽閉生活を送ります。そして、本来は抗日戦争のために養っていた張学良の東北軍は37年2月には解体。中共も甘粛省に遠征していた2万人の軍を失うなど、合意内容はうやむやになってしまいます。

 そして著者が語るように《蒋介石の約束が明確な形をとってあらわれるのは、抗日戦争開始》を待たなければならないんですねぇ。

 いやー、こんな尻すぼみの事件だとは思いませんでしたよ。例えばWikipediaなんで西安事件を読んでも、まったくこうしたことは書かれていません。Wikiは簡単に調べられますが、まあ、この程度、ということもあるということなんでしょう。

 そして、実質的な国共合作がなるのは1937年7月7日の盧溝橋事件を待たなければならなかったわけです。

 《なぜ、日本軍は北京と目と鼻の先にあるこんなところにいたのだろうか》(p.170)と著者も書いていますが、それは読んでのお楽しみ。

 チラッとネタバレを書くと宋美齢はすでにこのとき中共に入党しており、張学良は入党を申し入れたものの、コミンテルンから警戒されて断られていたというんですなぁ。いやー、奇々怪々。

 とはいうものの、著者の結論は明確です。

 《現在の中国では、一九三七年から四五年の八年にわたる戦争で、中国軍民の死傷者は三五〇〇万人以上、財産の損失は六〇〇億ドル以上と推計されている。他方で、日本軍の死者は約四七万人と見積もられている。中国人を屈服させる、簡単に言えばただそれだけのために行われた戦争と無数の蛮行・殺戮によって、日本はそれまでの日中関係史を根本からぶち壊すような巨大な不幸をつくりにつくったといわざるを得まい》(p.228)

 もちろん日本の侵略は中国のナショナリズムの覚醒をうながし、やがては革命へとつながるのですが、《奪ったものの大きさや戦争自体の惨禍の甚大さには及ぶべくもない》のです。

 何回かに分けて書こうと思います。

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