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October 10, 2010

『今夜もイエーイ』

Yea

『今夜もイエーイ』大竹聡、本の雑誌社

 一目惚れ状態となっている雑誌「酒とつまみ」のファウンダーである大竹聡さんが、様々な雑誌に書いてきた酒にまつわる文章を、これまた(かつて愛していた)「本の雑誌」が編集して出したというんですから、期待していたんですが、ちょっと編集にはガッカリかな。

 ただ集めりゃいいってもんじゃないというか、並べ方さえ工夫していないというか。

 せめて面白いのを前にもっとくるとか、基本中の基本が出来てないなぁ、みたいな。

 もしぼくが並べるんだったら、最初にもってくるのはやっぱり「角打ち」に関する文章にします。

 「角打ち」というのは北九州で広く残っている酒屋さんの店頭で酒を飲むこと。

 「扉のない酒場へ」と題して門司から小倉、黒崎、戸畑などをめぐる角打ち事情のルポは、なんか文化人類学的な興味までわいてきそうな名文。

 それが70頁から始まるんじゃねぇ…。

 ぼくみたいに「とりあえず買った本は、もったいないから9割近くは完読する」という人間じゃないかぎり、途中で放り出されるんじゃないでしょうか。


 「コロッケ、何つける?」
 店の奥さんに問われて、
 「ソース」
 とだけ、答える。
 短い言葉のやりとりは、それだけを聞いていると、まるで家族の会話のようだ。「いらっしゃいませ、こんにちは」だとか、「はい、よろこんで」だとか、言われてもちっとも嬉しくないお仕着せの挨拶に食傷気味の東京モンには、この、素っ気なさが心地いい。素っ気ないが、伝えたいことがちゃんと伝わっている安心感がある。これも、角打ちの魅力だろうか…。

 こんないい文書が読めるのが78頁ですよ…。

 そこへ一人の客があって、やはり一杯の日本酒を買った。コップを持ち上げ、口に運び、するすると飲み始める。ああ、まさかと思いながら見ていると、その初老の男性は、一度もコップを下ろすことなく、一気に飲み干し、回れ右するや店を去っていった。声をかける暇もない。

 なんていうのもいいじゃないですか(p.92)。升の角から酒を飲むことから、角打ちという呼び方がついた、なんていう情報もキッチリ入ってる。

 この本ではカップ焼酎や鹿児島のソーメン流しなど、九州について書いている文章が特にいいですね。なんで、これらを最初にもってこないのかな…不思議でならない。

 最後に、また好きな文章を引用して終わりにします(p.142)。


 世に銘酒はあれども、ワタクシ、焼酎が好きです。中でも、甲類焼酎。大好きと言ってもいい。とはいえ、あの甲類焼酎そのものを好むんではなくてチューハイ、サワー、あるいはホッピーで割ったりして飲むんですが、うん、そうです、静かにゆっくりなんて酒にはならない。ガブガブ飲む。これもひとつのスタイルってもんでございます。

 ここで紹介されている、かつては中目黒、いまは祐天寺に移ったというレモンサワー発祥の店「ばん」にも行ってみたくなりました。

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