『聖者の戦い 小説フランス革命3』
『聖者の戦い 小説フランス革命3』佐藤賢一、集英社
恐ろしいことに、この悪文に慣れてしまったのか、3巻目は、割とスンナリ読めてしまったのが、正直、なんとも微妙な心持ち。
とはいえ、マンガ感覚といいましょうか、フランス革命というあれだけの大事件を小説仕立てにしてくれると、知らない間に、いろいろ情報が与えられるというのは、やっぱりありがたいことです。
たとえば、タレイラン。
ジャコバン派の恐怖政治の時代も生き抜き、ナポレオンのブリュメール18日のクーデターで成立した政府でも外務大臣の座を占め、さらにはルイ18世の即位後も外務大臣を続けてウィーン会議で列強を煙に巻き、はたまたナポレオンの百日天下のあとには首相にもなってしまうという長命な政治ですが、シャルル=モーリス・ド・タレイラン=ペリゴールという名前からもわかる名門貴族の生まれ。
しかし、こういった人間にも必ずひとつの弱点はあって、実は、そのために政治的にも、生物的にも長命を保持したんじゃないかと思うのですが、それは片足の障害。
そして、家の格式によってフランスでも屈指の司教座を占めていた聖職者でありながら、放蕩を重ねるだけでなく、教会資産の国有化を提案することで、世俗化を一気に進めることができたのかな、と。
また、ラ・ファイエットの道化のような描き方も印象に残ります。
ダントン、マラも活躍しはじめ、最後には、いよいよロベスピエールのもとにサン・ジュストから手紙が来るというところで終わるのですが、4巻目が楽しみ。
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