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September 03, 2010

『日本経済のウソ』

Nihon_keizai_no_uso

『日本経済のウソ』高橋洋一、ちくま新書>

 現実の経済を言語化するというか、解釈可能にしなければ、問題の解決策などもおぼつかない、ということであれば、少なくとも凡百の経済書を読むよりは、高橋洋一さんの本を読んだ方がいい、と思います。

 ということで、実は本書も最初は「なんつうか粗製濫造かな」と思ったのですが、ちょっと目次を眺めただけで、今日的な課題に答えようとする意欲が伝わってきます。

 普通の経済書(類書も含めて)は、コムズカシい問題点の抽出、現状分析、課題の設定、その対処法などという手続きを踏むのですが、筆者の場合は「問題点はデフレ。解決法は実質金利を下げることで、対処方法は日銀法を改正して、日銀の過度な独立性を廃して、インフレターゲットに沿った金融政策をとらせること」とハッキリしています。

 タイトルの『日本経済のウソ』は、日銀がその無策ゆえに御用学者などに語らせている「量的緩和はマクロ経済効果がない」というのはウソであり、中央銀行の独立性というのは通常、世界では手段のみで、目標の独立性までは与えられていない、というのが世界の常識だという意味。

 まあ著者が大蔵出身ということを差し引いても、金融機関に日銀OBが大量に天下りしているのはインフレ目標などの情報を日銀から得るためであり、学者さんに研究費出して日銀の意向に沿った論文を書かせ、大マスコミにはリークを通じて思惑通りの記事を書かせるという日銀の手法は感心しません。

 まあ、問題がなければいいんでしょうが、日銀はバブル崩壊後の20年間の金融政策をことごとく失敗しており、普通の上場企業ならば(まあ、有名ですが日銀は上場しています)、損害賠償請求を受けていることは確実ではないでしょうか。

 しかし、日銀は1998年の日銀法改正で地球上で最強の独立性を獲得してしまいます。

 現在、雇用の最大化について日銀法で目標に明記すべきであると連合の古賀伸明会長も述べており、臨時国会でも改正案が提出されそうなので、GDPギャップを補正するFRB方式の雇用目標でも、EUのようなインフレ率でも、目標を明記する方向になればいいかな、と思います。

 日銀は量的緩和には消極的ですが、ゼロ金利下でも量的緩和を続ければ《名目金利が低くなる一方で、一般物価の将来予想は高くなります。つまり、実質金利(名目金利から予想物価上昇率=予想インフレ率を差し引いた金利)は低く》なり(p.26)、それによって実質金利をマイナスにでき、設備投資を促すことができる。しかし、今は実質金利がアメリカより高いし、物価が安くなると円高圧力がかかっている(p.27、36)。

 つまり、日銀はデフレ経済の確信犯だと著者は結論づけます。日本もテイラー・ルールに従ってやるべし、と。FF(フェデラル・ファンド)レート=政策誘導金利をインフレ率2%、完全雇用の時に実質金利が2%になるように運営せよ、と。

 財務省出身者らしい強烈な日銀批判だとも感じますが、今の円高に対する無策をみれば仕方ないかもしれないと思います。

 長い目で見れば、20年間、ロクな政策も打ってこずに、守りに徹して失敗したのですから、インフレ目標は国が設定し、中央銀行は手段だけの独立性を持つべきというのは納得できます。

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