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September 13, 2010

鎌倉の権力の館と抹茶アイスクリーム

Kamakura_bungakukan

 『権力の館を歩く』御厨貴、毎日新聞社を読んで、一度、訪ねてみたくなった佐藤栄作の鎌倉別邸をさっそく見物してきました。

 元はといえば、加賀・前田家の別荘として建てられ、佐藤栄作が首相になってすぐ、週末を過ごす別荘として借り上げ、その後もずっと住んでいたという「権力の館」です。

 加賀の前田といえば百万石。太平洋戦争当時でも家来が140人いたそうです。

 現在は、鎌倉文学館として公開されていますが、ぼくがつたない文章で紹介するよりも、三島由紀夫が『春の雪 豊饒の海(一)』で松枝(まつがえ)侯爵家の鎌倉の別邸として描写しているところを引用します。

 青葉に包まれた迂路を登りつくしたところに、別荘の大きな石組みの門があらわれる。王魔詰の詩の題をとって号した『終南別業』という字が門柱に刻まれている。

 この日本の終南別業は、一万坪にあまる一つの谷をそっくり占めていた。先代が建てた茅葺きの家は数年前に焼亡し、現侯爵はただちにそのあとへ和洋折衷の、十二の客室のある邸を建て、テラスから南へひらく庭全体を西洋風の庭園に改めた。

 南面するテラスからは、正面に大島がはるかに見え、噴火の火は夜空の遠い篝になった。由比ヶ浜までは庭づたいに五、六分で歩いてゆける。そこで侯爵夫人の海水浴のありさまを、ここのテラスから侯爵が、遠眼鏡で眺めて打ち興じることがある。しかし庭と海の間にはさまる畑の景色がいかにも不調和なので、そこを遮る松林の植林が、庭の南端をめぐってはじめられ、それがみごとに生い立つ暁には、庭の眺めはただちに海へつながる代りに、遠眼鏡の座興も失われる筈であった」
(新潮文庫旧版231頁、改版263頁)。

Kamakura_hannyabou

 建物自体は大仰なものではありませんが(もちろんこんな家を鎌倉に別荘で持つことは、今となっては不可能にしても)、とにかく目を奪われたのが、バルコニーから眺める七里ヶ浜の絶景。

 建築当初からすれば、ちょっとジャマなビルもありますが、深い谷に囲まれた前方に、キラキラする海が広がっているというシチュエーションは、人を黙らせるのに十分です。

 帰りは長谷から江ノ電に乗ったのですが、余りの暑さに途中で緊急ピットインしたのが、なんでもオバマ大統領が抹茶アイスクリームを食べたという店。

 まったく偶然に入りました。

 オバマ大統領が来日した折、子供の時、初めて日本に来た時、母親と一緒に鎌倉へ行き、大仏を見たが、子供の自分は大仏より抹茶アイスクリームの方がよかった、とスピーチの中で紹介したエピソードがあるんですが、その可能性のある店だとか。

 どうも30年以上前から営業を続けているというあたりから、その可能性があるということらしいんですが、それが甘味処「般若坊」(神奈川県鎌倉市長谷2-14-24 0467-22-6845)。

Kamakura_bungakukan2

 10人も入ればいっぱいになるような店ですが、店内はオバマのエピソードがなくても十分、人を引きつけられるだけのセンスがありました。

 もっとも、自伝では湖を走るフェリーの中で抹茶アイスクリームを食べた、ということになっているらしいので、どうなんでしょうか。

 とりあえず、抹茶アイスクリームは甘かったですw

 まあ、鎌倉で権力の館と、権力の抹茶アイスクリームを同じ日に味わえたのは貴重な経験でした。

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