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August 26, 2010

『「普天間」交渉秘録』

Futenma

『「普天間」交渉秘録』守屋武昌、講談社

 これは沖縄と政府、さらには米国との交渉を、当事者トップ自らが赤裸々に描いて出色のドキュメントとなっている本。

 あまり使わないようにしていますが、お勧め!

 著者は防衛事務次官をつとめ、小池ゆり子防衛相との人事をめぐる派手なやりとりの後、収賄罪で逮捕・起訴されて実刑判決を受け、控訴中の人物。

 まあ、それはおいといて、普天間の危険性を声高に叫びつつも、いっこうに辺野古への移転の話を進ませない沖縄の首長たちの姿には驚きました。

 沖縄の稲嶺前知事などは8年間全く何もやらず「守屋さん、沖縄では大きな仕事は二十年かかるんですよ。石垣空港もそうだったでしょう。あの時だってそれだけ年月がかかっても誰も困らなかった。今回はまだ7年です。たいしたことないじゃないですか」と答えたそうです(p.83)。

 この稲嶺知事は、額賀防衛大臣と「V字案基本確認書」に署名した後の記者会見で「合意していない」と発言して混乱させるというところまでやっているのですが、ではなぜ、こんなに長引かせるんでしょうか。

 地元の建設会社社長は「浅瀬案のように海に作るのは、環境派が反対し実現不可能というのが沖縄では常識。沖縄の一部の人びとは代替飛行場を作るのが難しい所に案を誘い込んで時間を稼ぎ、振興策を引っ張り出したい。作るにしても反対運動が起きて時間を稼げるようにしたい」「地元は疲れ果てて、どちらでもいいと思っている」と説明しています(p.104)。

 つまり、最終的にはガッポリ建設費で儲けるにしても、それまでの間もチビチビと振興策を小出しにさせて、儲けていこう、と。諸井虔さんなどは「政府は沖縄に悪い癖をつけてしまったね。米軍基地の返還などが進まなくてもカネをやるという、悪い癖をつけてしまったんだよ」とも語っていますが、まあ、そういう側面はあるんでしょうな(p.102)。

 だから少しでも埋立面積を広げて工事費を稼ごうとするような地元建設業者が出るわけです。

 しかし、埋立が拡大すると環境アセスで振り出しに戻るという著者の判断のもと、政府側といいますか防衛省側の著者はブレずに交渉を進めようとするのですが、合意するたびに沖縄側は「ちょっと拡大」「ちょっと海へ」と持ち出して混乱させようとします。

 中でも名護市の末松文信助役の前日言ったことをひっくり返す見事なまでの背信行為には、著者も最後には「あなたは昨夜私と打ち合わせたものと、まった違う主張を言っている。誠実さがない」と握手を拒否するほどで、ぼくにはなんか神話的な人物にさえ感じました(p.259)。

 さらに、地元政治家だけでなく、政商の中にはアメリカに赴いて米海兵隊に独自案を示して外圧を利用しようとする動きをみせる人物もいるほど。

 誰を批判するつもりはないと著者は書いていますが、ことあるたびに話を蒸し返す末松助役、沖縄の後援会からの要請を聞けとゴネる中川元幹事長、小池元防衛相などは度し難いという気持ちが伝わってきます。

 にしても、石破元防衛相などは「自民党が橋本政権から何十回も積み上げてきたものを民主党が潰した」と主張していましたが、そのウソというか、唯一実現可能なV字案を本当にまとめようとしていたのは小泉首相ぐらいだというのがよくわかりました。他の自民党議員は官房長官なども含めて引っかき回していただけ。

 と同時に「最低でも県外」といってしまった鳩山前首相の軽率さも、やはり唖然とします。高い支持率を維持できていたら、押し切れたかもしれないが、いったん坂道をころがると、致命傷になってしまった、という印象。

 とにかく、この本に書かれていた沖縄の人物たちが、その批判に答えないのならば、もし普天間で大事故が発生したら、歴代の県知事、北部の首長たちが責任をとるべき、みたいなことさえ感じてしまいます。

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