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July 05, 2010

『シリーズ 中国近現代史 1 清朝と近代世界 19世紀』#5

『シリーズ 中国近現代史 1 清朝と近代世界 19世紀』#5

 李鴻章は台頭する日本を牽制するため、朝鮮に欧米列強との条約締結を勧め、その内容を監督するために馬建忠を送ります。条約の中身で問題となったのが、「朝鮮は清朝の属国であり、内政外交は自主だ」という内容を盛り込むこと。これは明らかに近代法としておかしな定義で、結局、条約本文には盛り込まれず、米国の場合は大統領への照会という形をとり、しかもそれも認められないということになりますが、とにかく1882年に米英独とも条約が締結されます。

 しかし、同年7月に、こうした干渉に不満を抱いていた軍人が蜂起し閔氏政権は打倒され、国王の父である大院君が権力を回復します(壬午軍乱)。日清は軍を派遣しますが、馬建忠は大院君を捕らえて天津に送り、閔氏政権は復活。

 馬建忠の指示のもと復活した閔氏政権は、8月に日本と済物浦条約を締結しますが、こうした成り行きに朝鮮側はさらに反発を強め、1884年に清朝の軍事力が清仏戦争に向けられたのをキッカケに金玉均・朴泳孝らは甲申政変を起こし一時的に権力を掌握します。しかし、これも袁世凱軍によって粉砕されて、金玉均・朴泳孝は日本に亡命し、日清は天津条約を結んで、両国の朝鮮からの撤兵などを決めます。

 しかし、これで収まるハズはなく、1894年に東学に依拠した農民反乱が起こると日清両国は朝鮮に出兵、日清戦争が始まります。日本軍優勢のもとに選局は進み、95年には下関条約が締結され、清朝は朝鮮への宗属関係を放棄、台湾などを日本に割譲します。

 李鴻章の立場は苦しくなり、98年に康有為は光緒帝の支持を得て戊戌の変法運動を勧めますが、西太后は軍事力で変法を停止、光緒帝を幽閉します。

 この後、清朝も1905年頃には立憲君主制の導入を目指し、地方の士紳を支持基盤とした体制づくりを目指しますが、1911年、四川省などで地元資本が建設していた鉄道を国有化しようとすると猛反発が起こり、南方の省が次々と独立を宣言。清朝は引退していた袁世凱に鎮圧させようとしますが、かえって袁世凱は革命派と取引して宣統帝を退位させ、自ら中華民国の臨時大統領に就任して270年以上続いた清朝は幕を閉じます。

 ここでは日本との関係を中心に書いてきましたが、甲申政変はベトナムとの関係も深く関わってきます。

 ベトナムでは1802年に阮(グエン)兄弟によって阮王朝が建てられますが、ナポレオン三世は第二次アヘン戦争と並行しつつ、ベトナムに出兵。1873年には軍事的保護の受け入れをフランスから強要されます。しっかし、当時の列強というのは、本当に強欲ですなぁ。アジアには同情しますよ。
 
 こうした中で、なぜか太平天国の生き残りが雲南に居座り、フランスにとっては、通商のジャマとなっていました。このため、ハノイに軍を進めますが、清朝も国境を越えて交戦。最終的にはフランス海軍が、左宗棠が苦心した福建の艦隊を壊滅させるなど、清朝にとっての悲劇が続きますが、にしても、「朝鮮、ベトナム。太平天国の乱」というのは複雑にからみあつているもんですな。

 左宗棠のライバルだった李鴻章の建設した北洋艦隊も日清戦争で日本に敗れただけでなく、主力の定遠、鎮遠がブン獲られてしまうのですが、清朝末期というのは手塩にかけた打開策がことごとく水泡に帰することの連続だったようです。李鴻章へのオマージュとして、せめて北洋艦隊旗でも掲げましょうか。

Hokuyoukantaiki

 にしても、こうやって清朝というフィルターを通してみた方が、日本史という視点からみるよりも、近代のアジア史というのは、よくわかるな、というのがこの本を読んでの印象でした。

 最後に「おわりに」から引用します。素晴らしいまとめだと思います。

 今後、日本にとって中国はますます大きく重要な交流相手となることは確かであろう。しかし、現在の中国が歴史的な背景としてもつのは、清末の近代化だけではなく、ユーラシア東部の広域的政治支配を展開した清朝の存在である、そのように考えておくほうが、中国について奥行きをもって理解することができるに違いない。

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Comments

80年代に中国の国連大使を務めた人物が林則徐の子孫なんです。以前読んだ本の記憶があってれば、延安時代の毛沢東の英語通訳をしていたはずです。
林則徐の一族の系譜がどうなっているのか、興味あります。

Posted by: hisa | July 30, 2010 at 06:05 PM

ほー、まあ、救国の英雄でしょうから、子孫も大事にされているんですかねぇ
『中国の赤い星』を書くにあたって、エドガー・スノーの通訳でもしたんですかね?

Posted by: pata | July 31, 2010 at 12:55 PM

http://bit.ly/aRzt8O ジョン・ロドリック『中国史の目撃者』の延安時代の挿入写真にあったと思います。


Posted by: hisa | August 03, 2010 at 06:37 PM

『中国史の目撃者』注文してみました!

Posted by: pata | August 04, 2010 at 07:08 AM

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