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June 16, 2010

『縄文聖地巡礼』

Jomon_junlei

『縄文聖地巡礼』坂本龍一、中沢新一、木楽舎

 ワールトカップも始まり、おまけに愛する日本代表が初戦に勝ってしまうなど、大変な日々を送っているのですが、読んだ本の感想がたまっているので、ちょっとずつ書いていきます。

 ということで、ここ最近読んだ中で一番よかったのが『縄文聖地巡礼』。教授と中沢さんが、青森から鹿児島までの縄文の遺跡をめぐって対談するという内容です。

 縄文というと、ぼくが思い浮かべるのはアイヌあるいは沖縄の人。1万3000年~3000年ぐらいまで日本列島に広く分布して狩猟を中心とする生活を営んでいたが、国家を形成するまでには至らず、やがて弥生人たちに生活圏を広げられて、九州や北東北に押し込められていった…というイメージでしたが、この本を読んで、だいぶ修正されました。

 縄文というのは多様だな、というのが修正されたイメージ。

Torihama_kaizuka_doki

 特に個人的に驚いたのが鳥浜貝塚から出土された土器の洗練された美しさ。

 中沢さんが《東や北のゴテッとした土器とちがって薄手で洒落てる。ぼくらが使っている陶磁器なんかよりずっとデザインとして優れているし》という感じそのままの、まるでモダンアートの作家がつくったような美しい土器(p.60)。

 中沢さんの叔父さんである網野善彦さんによって広められた「逆さ地図」でみると、日本海は内海だということがよくわかるし、1万年ならなおさら、大きな湖のようなものだったろうと思います。そして、日本海側は南朝鮮と同じ文化圏を形成していて、逆に朝鮮半島が北方の方から変わっていった、という流れを感じさせてくれます(p.62)。

 《いまの芸能界を見ると、日韓がひとつの世界になりつつありますが、芸能界で起こることは、経済や政治の世界で起こることの先鞭をつけていますから、おそらくこれからの未来的な経済圏として、朝鮮半島の南部と日本は一体となっていくのではないでしょうか》(p.56)という大胆な見通しにもハッとさせられた「第二章 敦賀・若狭」は一番印象に残りました。

 「第一章 諏訪」では《たとえば詩みたいなものは、似ているものの意味同士を重ねて、意味を価値増幅してるわけでしょう。ホモ・サピエンスは価値の発見をしてるんですね。ネアンデルタール人は意味を発見していたけど、ぼくらの先祖は価値を発見した》(p.42)というあたりや、日本列島は四つのプレートがぶつかって持ち上げられて出来たのだから、《そのエネルギーの見えるものとしての山があるから、山岳信仰は当然出てくるだろうっていうのは感じる》(p.52)という指摘にはうなりました。

 「第四章 山口 鹿児島」では博物館の展示をみても南九州の土器には縄文、弥生、古墳の各時代に連続性があり、古墳がほとんどつくられていなかったということは、中央に国家ができても平安時代ぐらいまでは首長が支配するような体制が続いていたんじゃないか、というあたりの話が面白かった。

 奈良県桜井市の纏向遺跡(まきむくいせき)や前方後円墳との対比を考えると「南九州は異質だな」と感じます。あまり邪馬台国論争とか興味はないのですが、中沢さんが書いているような、等価交換で動くことの象徴であった「纏向の市場」は国家を生む土壌となったという話の一方で、国家を持たずに贈与経済で動いていた縄文の世界が中世まで列島に同居していたのかな、という想像は楽しいし、朝鮮半島とのつながりを強調する天皇家は、一方でインドネシアから渡ってきた隼人族の経済力や軍事力ほ婚姻関係で利用していった、という話も面白い(p.140-)。

 最後に紹介されている『DNAでたどる日本人10万年の旅』崎谷満、昭和堂によると、アフリカから出た3つの系統(C、DE、FR)は世界の多くの地域では2つの系統しか残っていないのに、日本で3つとも残っているのは、集団同士の殺し合いが少なかったことをうかがわせる、という話はどこかホッとさせられます。また、稲作は江南から伝わったけど、江南人のDNAは少なく、小さな集団でやってきたけど、あっという間に伝播したというのも、初めて聞く話で感動しました(p.190)。

 最後に素晴らしい装丁にはふれざるを得ません。手触りの柔らかい紙を使用し、頁が背からはがれてしまうんじゃないかというはかない感じも受けるのに、しなやかに形を保っているという印刷会社GRAPH(グラフ)の仕事には恐れ入りました。

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