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May 26, 2010

『1917年のロシア革命』

1917

『1917年のロシア革命』ロイ メドヴェージェフ (著), 石井規衛, 北川和美, 沼野充義, 横山陽子(訳), 現代思潮社

 『新・現代歴史学の名著 普遍から多様へ』樺山紘一(編)、中公新書で紹介されていたので読んだ本ですが、いやー、面白かった。

 ロシア革命史というのは、スターリン時代の旧ソ連の汚名に隠れてはいるけど、人物模様の面白さとしてはフランス革命、明治維新、アメリカ独立戦争に匹敵するんじゃないかと思います。トロツキーなんか、青春小説の題材にしてみたら、龍馬伝ぐらいいくんじゃないですかね。

 まあ、そんんなことはおいておいても、レーニンの最大の功績はネップの導入であったけど、最大の誤りは民主主義の軽視だったという結論は納得できるし(p.176)、権力奪取後も社会主義国家像に対するコンセンサスがボリシェヴィキ内でもなかった、というのは新鮮な指摘でした。

 レーニンは有名な四月テーゼの中で、「全ての権力をソヴィエトに!」というスローガンを掲げます(p.48)。この時点での最大の獲得目標は第一次世界大戦からの撤退。実際、招集されたロシア兵たちは、なぜドイツと戦うのかということに関しては、ほとんど理解できていない状況でした。ブルジョワ革命は起こりますが、こうした主要問題を解決できる能力がないことがわかり、レーニンたちボリシェヴィキは、権力をブロレタリアートに移す革命を準備せざるを得なかった、と。

 そして実際の10月革命も実にスムースに行われました。蜂起したとたんに権力が引き渡された、みたいな。皇帝一家を除けばほぼ無血暴力革命、みたいな。だからレーニンも、12月の時点では『武器をもたない人々をギロチンにかけたフランスの革命家が行使したようなテロルを、われわれは行使していないし、将来も、行使しないと思う』と述べていたほど(p.55)。そして、レーニンは翌1918年1月10日のソヴィエト大会の開会にあたって、ソヴィエト政権は71日間続いたパリ・コミューンより長いこと持ちこたえたと語ったそうです(p.57)。いやー、ここらへんは感動的。

 この間、何が課題となっていたのかというと、新生ソ連にとって屈辱的な条件となっていたにせよ、戦争を早く終わらせるためにブレスト・リトウスク条約をなんとしても締結すること。エスエルも政府から引き上げたし、ボリシェヴィキからも離脱者が出ました。しかし、なんとか説得。レーニンは「われわれ、ボリシェヴィキ党は、ロシアを説得した」と書きます。

 レーニンは1913年にマルクス没後にあたって小論を発表していますが、まさか5年後に、プロレタリア国家がいかなる「新しいもの」であるかという定義を示すととともに、なにを一掃すべきかという決断を自分が下さなければならないとは思っていなかっただろうという著者による問題的は重要だと思いました(p.61)。

 マルクスはプロレタイリア独裁といいますか、革命後の政権のあり方については、きわめてぼんやりとしたイメージしか持っていませんでした。

 この後、急進的な経済政策を推し進めたことで、第一次大戦から帰還した兵士たちがせっかく農村で頑張った結果を無にしてしまい(1918年の困難な春という概念は面白いと思いました)、その後、やらんでもいい内戦を経て(コサックに対する無意味な弾圧)、レーニンはネップによって、ようやく経済を立て直しますが、もうその時点では、生物学的といいますか社会的生命は尽きようとしていました。

 マルクスは『フランスの内乱』でアリストテレス以来の六つの政体に変わる新たなコミューンという政体をプロレタリアートは生み出したとしていますが、実際に、どう政権を運営するのかというところまでは、もちろん考察できませんでしたし、たとえ考察できたとしても、エンゲルスのやりそうな空論に終わったと思います。

 とにかく、理念的には死滅させるべき国家を暫定的にせよ、他がすべて資本主義国家の中で運営する方法などわかるはずもなく、レーニンはあらかじめ解決不可能な問題にいどんだのかもしれません。

 ということでメドベージェフが協力している新刊『スターリン―赤い皇帝と廷臣たち 上下』サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ著、染谷徹訳、白水社も読んでみようと思います。

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