加藤登紀子 iTunes Originals
加藤登紀子さんの歌は子どもの頃から好きでした。
C・W・ニコルさんがどっかで語っていたのですが、加藤さんの歌声は原野で聴いても、都会の雑踏の中で聴いても響く、と。
どんなシチュエーションにも負けないといいますか、しなやかに自立している感じがします。
iTunes Originalsはミュージシャンがそれぞれの曲についてコメントを付けて聞かせる企画で、結構、好き。
いろいろ持っていますが、加藤さんはポール・サイモンと同じぐらい、いろいろ語っています。
それは語るべきことを持っているからなんじゃないですかね。
最初の曲は、藤本敏夫反帝全学連委員長の子供を産んだ時、獄中にいた彼がどんなことを考えたのかと想像して書いた『君が生まれたあの日』。
藤本さんは内ゲバにイヤ気がさして、運動から身を引いた人で、加藤さんとは72年に獄中結婚しています。
でも、この曲が実際にできあがったのは藤本さんが死んだ後のこと。
話を聴いていて、加藤さんというのは強い人だなぁ、と改めて思いました。
『紅の豚』のジーナとして唄った『さくらんぼの実る頃(Le temps des cerises)』は、今ではご存じの方が一番多い曲かもしれませんが、これはパリ・コミューンで虐殺された人たちを、コミューンの参加者だったジャン=バティスト・クレマンが追悼した曲だというのも語りたかったんだろうな、と思います。
5月はさくらんぼの実る頃であると同時に、パリ=コミューンがドイツとフランスが野合した軍隊によって崩壊しつつあった頃。
加藤登紀子さんは、フィリピン革命の一周年でも歌っているし、フランス革命200年でも現地で歌っているし、宮崎アニメではパリ・コミューン由来の曲を歌うし、リベラル・レフトという立ち位置をうまくオブラートに包んで、遠くから語っていると思う。
フィリピン革命1周年のコンサートでは、直前に挨拶したアキノ大統領のジェッヘリが離陸する爆音も入っているし、フィリビンの人たちがタガログ語で一緒に唄っている音も入っています。
音源はカセットだそうで、もちろんHiFiじゃないけど、そんなこと関係ないほどの臨場感を感じました。
文句があるんなら、こういった時に、こういったところで歌ってから言ってこい!という自信も感じられます。
こうした曲に共感できるというのはありがたいことだと思っていますし、女性というのは強いな、負けるな、と思います。
海外で似ている人を探せば、ジョニ・ミッチェルですかね。
でも、ジョニより歌は遙かに上手いと思う。
随分昔、一度だけストリップ小屋に行ったことがあります。《信頼できる友人に一度、連れていってもらいたかった》(グレアム・グリーン『ヒューマン・ファクター』宇野利泰訳)みたいな感じで。
そしたら踊り子さんたちの多くが『百万本のバラ』をバックに踊っていました。
C・W・ニコルさんになぞらえていえば、原野でも、都会の雑踏の中でも、ストリップ小屋でも、加藤さんの歌は素晴らしい、と思います。
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