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March 26, 2010

『もてなしの心 赤坂「津やま」東京の味と人情』

Motenashi

『もてなしの心 赤坂「津やま」東京の味と人情』野地秩嘉、PHP研究所

 いやー、これは久々によかった。
 
 赤坂の「津やま」といえば、首相官邸から歩いていける場所にあり、小泉首相の時などは「総理の飯屋」とも言うべき存在として有名でした。
 
 その「津やま」の主人、鈴木正夫氏が、ダイナースカードの会員誌「シグネチャー」に連載していた「娘に贈る家庭の味」と題するレシピに、修業時代の銀座「わたき」の話なども交えて再構成したのが本書。
 
 例えば牛肉のお狩り場焼きは、薄切りの牛肉とタマネギを炒めるだけの料理ですが、コツはタマネギの身を外側から二枚剥くこと。こうすることによって口当たりも味も変わってくるそうで、さらに、剥いた外側は冷凍保存してもいいし、味噌汁の具にすればいい、というあたりが、鈴木さんが大切にしている「家庭の味」なんでしょう。《フライパンにサラダ油を熱して輪切りにした玉ねぎを炒めます、炒めているうちに身はバラバラになっていきます。透き通ってきたら牛肉を入れます。さっと火を通したら醤油を少々ふりかける。身のピンク色が残っているうちに皿にとってください。それを大根おろしと少しの醤油で食べます。塩も胡椒も使いません》なんていいでしょ?(o.56)。
 
 また、「沢煮鍋、豚の角煮、鯛茶漬けができればいつでも料理屋を出せる」と師匠に教わったという三品のレシピも読んでいるだけで口のなかに唾液がたまってしまいます。沢煮鍋は小和田雅子さんにも作り方を教えたとのことですが《簡単ですし、ヘルシーなものですから、結婚されて、酔っ払って帰ってきた旦那様に作って差し上げると喜ぶんじゃないでしょうか。沢煮鍋だけをきちんと作って後はデパートでお刺し身を買ってこられてもいい。それにご飯と漬け物を添えれば立派な料亭の味です》なんてあたりの語り口もいいです(p.18-)。
 
 《薄味を自分のものにするのは時間がかかります》(p.61)、《筍が一本あったら、半分は煮物にして、残りはご飯にしましょう》(p.82)なんてあたりもいいなぁ。
 
 アウトドアでやるホイル焼きは香りを食べるものだから、キノコあるいは山菜だけにして白身の魚とか入れない(p.93-)なんかも実用的な知識ですし、冷や奴を作る時には買ってきた豆腐をすぐにミネラルウォーターなどの水を入れたボウルに放つだけでニガリが溶けるし、きれいな水を含んでおいしくなる、というのも絶対、試したい。

 料理屋のおせちは昔、お得意さんに三が日は休ませてもらいますという意味でタダで差し上げるものだった、というのは知りませんでした(p.67)。それを「金を払うから同じものをつくってほしい」というお客が多くなってきて収入源になったそうで。
 
 ポテトサラダはジャガイモだけをしゃもじでつぶして、混ぜるのは塩少々とマヨネーズだけというのが一番うまい、というのもやってみたい(いろどりが不満な場合は細インゲンに茹でたのを添えるというのも実際的)。
 
 鯛茶漬けはけっこう詳しくレシピが載っていて、なかなか引用しきれないのですが、これも絶対やってみます。
 
 鈴木さんに言わせると、もてなしのルーツは「家庭料理」。《家庭料理がちゃんとしてなければ日本料理の水準も次第に落ちていきます》(p.30)と家庭料理は料理屋で出す料理より大切、というのが信念。これは、文を寄せている小泉元首相も褒めているところですが、なかなかいえない言葉ですよね。
 
 小泉さんは、めふん、イカゲソの醤油焼き、わさび芋など安いつまみでコップ酒を飲んでいたそうですが、そんななのも真似したくなりました。
 
 絶版みたいですが、まだAmazonでは古本が買えます。ぼくも何冊か買っておくつもりです。

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