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March 04, 2010

『バカヤロー経済学』

Bakayaro_economics

『バカヤロー経済学』竹内薫、晋遊舎

 『鳩山由紀夫の政治を科学する』が面白かったので高橋洋一、竹内薫という同じコンビの『バカヤロー経済学』を読んでみました。どちらも理系のお二人のうち、若くてサイエンスライターをやっている竹内薫さんが小学生に戻ったつもりになって、数学科から変人枠で大蔵省に入った高橋"埋蔵金"洋一先生に初歩から経済と世の中の仕組みを教えてもらう、という趣向。

 講義はやはり信用創造というかマネーストックの話から始めているのですが、高橋さんのように、紙幣になっていないバーチャルなお金が減っていくのが不況だ、と説明するのはわかりやすいな、と思いました。次に国際金融のトリレンマの話になって『固定相場制』『独立した金融政策』『自由な資本移動』という3つの政策を同時に実現することができないことを説明する流れはいいですね。

Bakayaro_economics_illust_2

 変動相場制だと公共投資をやっても、輸出が減って輸入が増えることになりますから、国内景気は一向に良くなりません。しかし、そのことに日本とドイツが気付くのに10年以上かかっているというんですね。1978年のサミットで日本とドイツは世界経済の機関車だと言われてその気になってバンバン景気刺激策をやるんですが、助かったのはアメリカだけ。やっとわかったのが1990年代に600兆円突っ込んだ公共投資がまったく効かなかったことに気付いた時だっていうんですから、ちょっと情けない(p.34)。

 1994年に金利が自由化されて民間の銀行同士でお金が借りられるようになったから公定歩合はもうなく、《国債や手形を買い取って民間銀行が持っている日銀の当座預金口座にお金を増やしてあげる》(p.48)という量的緩和政策にとって代わられたのですが、これによって短期金利を下げられるのだから本質的には金利政策と同じという前提から、変動相場制のもとで景気を回復させるのには財政政策よりも金融政策が効果的だというマンデル・フレミングの法則に持っていく流れもスムース(固定相場制なら逆に財政政策は有効だが金融政策は効きません)。

 自民党が予算委員会で民主党に乗数効果が分っていないと文句をつけたことがありましたが、だいたい公共投資をやっても、いまは乗数効果なんて期待できない、というわけです(たとえ内需が拡大しても、それが海外に流れてしまうから)。

 《日本銀行には「引き締めるが勝ち》ってDNAがあるらしいんです。これは戦時中、お金が必要だからっていうんで、いっぱいお札を刷ったの。そしたら、ハイパーインフレになっちゃってさあ。これが今でもトラウマになってるいんだよね》(p.65)というあたりから、福井総裁時代に金融危機が起こっているのに金利の下げ幅が小さいことを説明するのは、さすがに元財務省というあたりでしょうかね。

 先 世界の中央銀行の総裁っていうのは、まず間違いなく経済学の博士号を持っていますよ。でも、福井さんは法学士ですからね。こういう人が会合に出ると、一人だけ学生が交じっているかのようになる。これは、ちょっと恥ずかしいですよ。
 竹 どへ~、日銀総裁が経済の専門家じゃなかったなんて、国民のほとんどは知りませんよ(汗)

 というあたりは笑ってしまうと同時に、日銀を下に見る大蔵DNAを感じてしまいました(p.67)。

 また、財務省は日本の借金についても持論を展開しています。日本の場合はネット債務は60%。つまり、1000兆円債務があっても700億円の資産があるので、500兆円のGDP対比は60%にいかすぎない、ということ。

 政府資産を引いた純粋な借金をネット債務といって、普通はGDPに対してネット債務がどのくらいあるのかを見るのですが、日本はIMFにカネを出しているので、財務省がIMFにプレッシャーをかけてわざわざグロス債務の数字を出すようにさせている、というあたりの裏話は聞いたことありませんでした(p.126)。

 これぐらいならまだ可愛いもんですが、安部政権時代に税制調査会の会長を財務省主導の石弘光さんから、政府主導で本間正明さんに変えさせられた時、公務員宿舎に愛人を同居人として申請しているのを唯一知っていた財務省がリークして退任させたというあたりは凄すぎですよね(p.219)。

 まあ、お札を刷って配った方が金利の発生する国債を発行するよりいい、という高橋先生の持論は、まだ不安ですがw、面白い本でした。

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